tn198403s 高校時代blog

「人生に無意味な時間は無い。ただ、その時間の意味を感じることなく生きているだけである。」この言葉を確かめてみようと、徒然なるまま、私の高校時代(1984.03卒業)の意味を振り返り綴るブログです。

AI考(6) マッチ箱AIと「三目並べ」(2)マッチ箱AIは思考したのか

いきなりの問題です。

「三目並べ」で勝ちやすい初手

あなたが「三目並べ」の先手()なら、初手はA~Iの内、どこを選びますか?

あなたなら、初手をA~Iのどこにしますか?

三目並べに必勝法はないので、相手のミスを誘いやすい手を考えてください。

選択肢は9ありますが、同形を除くと実質、選択肢はA、B、Eの3つ。場所名で言うなら、角、辺、中心の3択です。

勝ちやすい初手は?

答えを先に知りたい方は、目次の中の「勝ちやすい初手 答え」をクリック。

この記事は、「 AI考(5) マッチ箱AIと「三目並べ」(1)知能とは何か? 」の続きです。

「AI考(5) マッチ箱AIと「三目並べ」(1)知能とは何か? 」要約

マッチ箱とくじ(ビーズ)をたくさん使ったマッチ箱AIは、「三目並べ」で負けない手を学習できるか?という話でした。

 

人間の手を示すラベルを貼ったマッチ箱にはくじが入っています。そのくじを引いてマッチ箱AIの手を決め、対戦を続けます。

 

対戦では、1手目(人間)はDを選び、その箱をAIに渡します。AIは受け取った箱のくじを引き、2手目をGにしました。

マッチ箱AIの手の進め方

3手目で人間はEを選び、その箱をAIに渡たした局面が④です。

3手目までをGIFアニメにしました。

3手目までのGIFアニメ

ゲームは4手目。

4手目 マッチ箱AIがF以外を選べば負け

ここで、マッチ箱AIがF以外を選べば負けが決定します。

マッチ箱AIは負けない手を見つけることができるでしょうか?

マッチ箱AIで再現

4手目(AI)続き

マッチ箱AIに学習させる方法

AIはまだ、A・B・C・H・Iを選んだ時に負けることを学習していません。

そこで、AIを賢くするために、失敗を繰り返させないこんなルールを発動します。

  • AIの負けが決定した手を、今後は選べないようにする。

先ほどの4手目でAIがAを選んで負けたとすると、次回からDGEと進んだ場合にAの選択肢を無くすのです。対戦を繰り返していると、またDGEと進む局面が出てきますが、その際は、Aを選べません。ここでBを選んだとすると、また負けます。すると、Bも選択肢から外します。同様にC、H、Iも負けてしまうことがわかったら、選択肢から外します。

 

当初4手目用のマッチ箱6個を用意していましたが、「負ける選択肢は外す」学習を経て、5個が削除され、Fの1個だけを用意することになります。

5つの箱を削除する

当然、3手目でAIが受け取ったマッチ箱くじも、最終的にFだけが残る仕組みです。こうして、DGEと手が進んだ場合、必ずFを選択するようになります。

必ずFと書かれたくじを引くようになる

結果、DGEを進んだ局面で負けない手を学習することができました。

こうした作業を繰り返すと負ける手は全て除外され、AIは負けない手だけを選ぶようになります。

 

さらに学習を重ねる

「賢くなったとしてもAIは三目並べでは勝てない」と考えるでしょう。「三目並べ」に必勝法はありません。両者が最善の手を選ぶと引き分けで終わるゲームです。

 

では、DGEFと手が進んだ後も見てみましょう。

DGEFと4手目まで進んだ局面

5手目(人間)

5手目の分析

5手目、人間の選択肢はA・B・C・H・Iの5通りです。

DGEFと進んだ局面

この中で1つだけ他と違う手があるのですが、どの手かわかりますか?

答え C 理由(次に3目並びができる手、リーチではない。)

※ ぼかし部分にカーソルをあてるか、タップで読めるようになります。

 

A・B・H・Iの4つは、次に三目並びができる手(リーチ)になっています。このため、AIが6手目で負けないための手順はしかありません。

 

<C以外の4つの場合を詳しく見たい人はここをクリック>

 

6手目(AI)

選択肢は4つ

5手目で人間がCを選んだとします。

6手目でAIの選択肢はA・B・H・Iの4つです。

DGEFCの場合

どの手を選んでも、最善手で進めればAIは引き分けに持ち込めます。

でも、できるなら勝つ可能性のある手を選びたいところです。

A、B、H、Iの内、どの手を選ぶとよいでしょう?

答え HまたはI

この手だと、AIからリーチをかけることができます。

<「HまたはI」の手を詳しく見る場合はクリック>

<「AまたはB」の手を詳しく見る場合はクリック>

勝つ可能性を高めるルール

お互いが最善手を選べば引き分けになるとしても、相手がミスした場合に勝てるなら、相手がミスしやすい手を選びたいところです。この場面、マッチ箱は勝利につながる手、HやIを学習することができるでしょうか?

 

結論を先に言えば、DGEFCと進んでAIに渡されるマッチ箱くじで、勝てる可能性のある手(HとI)だけを残すという方法があります。ただ、これだとマッチ箱AIは人間の考えた結果を仕込まれるだけになって、AIが考えることになりません。手の少ない「三目並べ」なら人間が先に答えを出せますが、もっと複雑なゲームでも、勝ちやすい手を見つけるために、新しいルールを設定してやります。

  • AIが勝てる手を選びやすくする。

対局が終わった後、次の対局に向けて、くじの戻し方です。

  1. 負けた場合、負けるくじは除く。
  2. 引き分けた場合、くじは元通りに戻す。
  3. 勝てた場合、勝てた手のくじを3つ増やす。

これで、対局を重ねる程に、勝てる手を選びやすくなります。

 

今回の記事では、マッチ箱AIは後手という設定でした。でも、先手番の学習もすれば、ミスを誘いやすい手をより多く見つけられるでしょう。

 

勝ちやすい初手 答え

ここで、冒頭の問題「三目並べ」で勝ちやすい初手の答えです。

後手が引き分けに持ち込める手を紫で表示しました。

後手が引き分けに持ち込める手

初手A(角)の場合、引き分けに持ち込める手は1つ。残り7つは後手の負け。

初手B(辺)の場合、引き分けに持ち込める手は4つ。残り4つは後手の負け。

初手E(中心)の場合、引き分けに持ち込める手は4つ。残り4つは後手の負け。

従って、勝ちやすい初手はA(角)です。

初手Aで、後手がIを選んだ場合をGIFアニメにしました。

AIGDCでダブルリーチ成立

この後、後手がBを選べば先手はE、後手Eなら先手Bで三並びが完成します。

 

マッチ箱AIでも、こうした答えを得ることができます。

 

マッチ箱AIを知るまで、あまり考えることなく初手はE(中心)を選ぶのが勝ちやすいと思い込んでいました。角を選ぶ有利さに気づかずにいたのです。おかげで、マッチ箱AIに敗北したように思われ、大きな衝撃を受けました。そして、今なお「思考」とか「知能」と呼ばれるものの正体は何かと、気になり続けています。

 

マッチ箱AIは思考したのか?

試行錯誤と思考

今でも、マッチ箱AIの仕組みを十分に理解できたとは思っていません。直感的には、ルールを適用しただけで、マッチ箱AIが思考したとは思いづらいです。

 

でも、思考とは選択の連続と言えるようにも思えるのです。単なる二者択一の場合もあれば、多くの選択肢から一つを選ぶこともあるでしょう。場合によっては新たな選択肢を発見することもあるでしょう。それでも最終的に何かを選ぶことで思考が進んでいくのではないでしょうか。

 

マッチ箱AI自身が考えて選択したのではなくても、負けや勝ちの試行錯誤を経て選択肢が変わっていく流れは、思考と言える気もします。

 

人間の思考

対して、人間の思考はマッチ箱AIよりはるかに高度に思えますが、三目並べの勝ちやすい初手を間違えていた私ですから、怪しいものです。人間の思考も結局のところ、試行錯誤の結果であって、自分で考えているようでありながらも、自身の経験から取捨選択しているようにも思えます。もちろん、文字や絵、映像などの記録等もあって疑似体験(学習)が豊富で、選択はより高度なものになっています。

 

例えば、美味しい料理を作れるようになったのも、失敗と成功の繰り返しとその伝達で、高度な知識や技術を得た成果でしょう。季節の移り変わりから暦、適度な水量や温度、適した土壌で美味しい作物を育て、それを適した加熱や調味で美味しいものに仕上げる。一人では無理な作業でも、多くの人の手によって成し遂げられてきたわけです。

 

単純な思考から高度な思考へ

マッチ箱AIは「三目並べ」に限っての試行錯誤でしたが、膨大な量のデータ(ビッグデータ)を得て、AIは急速に発展しています。将棋AIは人間の棋士に劣らぬ強さを持つようになりました。数学や物理学、医学等でコンピュータを駆使して証明することが当たり前になっています。飛沫の飛び方や、人混みの中の歩きスマホで人がぶつかるシミュレーション等、膨大なデータを基に一定の条件で試行錯誤(思考)させて、その結果から、人間が行動を変えるということも珍しくなくなりました。

 

となるとその際、思考したのは誰でしょう?AIでしょうか?人間でしょうか?或いは両方でしょうか?では、AIを作り出した人間を生み出した自然の思考の結果と考えるのは無理でしょうか?

 

話が飛躍し過ぎたかも知れません。でも、人間だけが思考や知能を持つというのは違う気がします。かつての記事に

もし、人間が考えることを放棄してしまったなら、AIは人間を葦として扱ってしまうのではないかーー?

と書きました。たとえ、人間より賢い者が現れたとしても、やはり人は思考することで人としていられるように思うのです。私の思考力がAIに劣るとしても、考えていきたいと思います。

 

 

AI考(7)(未定)へ続く。

 

 

これまでのAI考(1~5)

AI考(1)将棋AIとプロ棋士と私 

AI考(2)AI美空ひばりとAI手塚治虫 その人らしさ

AI考(3)AIの「遠い先の時代」と「近い将来」

AI考(4) AIと人間性と多様性、そして高校生の体験記『聾者は障害者か?』

AI考(5) マッチ箱AIと「三目並べ」(1)知能とは何か?

 

 

あと、-5記事。

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<余談 続・知能とは何か?>

前回、「自然現象も知能が働いているのではないか?」「生命を持たないAIを人工知能と呼ぶのなら、自然の現象を自然知能と呼んでもいいのではないか」と書きましたが、それについて補足します。

 

「 知能 - Wikipedia 」では、その冒頭で、

知能は、生活の新たな課題と条件に対する精神的順応力言語や記号を使う概念的思考能力、知識や技能を獲得する能力などを指す言葉。

と説明しています。

 

まず「順応力」に注目します。「精神的」かどうかはともかく、山の大きな岩が大雨で流されれば、川に落ちて割れ、転がる内により抵抗の少ない丸みを帯びた石へと変化します。これも順応力に思えるのです。海の水が太陽熱で蒸発して雲になり、雨を降らせて川となり、海に戻るのも同じ。自然現象そのものが順応の営みと言える気がします。

 

「言語や記号」には、動物や虫の鳴き声、求愛行動、縄張りのマーキング等も含まれる気がします。人間は、風の流れや雲の動きを確かめて、台風の進路や天気を分析しますが、自然現象の目に見える変化や分析でわかる変化もある意味、言語や記号として考えるのは無理でしょうか。紅葉を見て秋の深まりを知ります。風の音を歌や声に例えることもあります。象形文字の元が自然の姿形であることも多いです。となれば、自然の姿形そのものが記号と言える気もします。

 

植物は「知識や技能」をもっているでしょうか。乾燥の激しい場所では、草木が水を求めて移動することがあります。根を水のある方向に伸ばすのです。水のなくなった場所に伸びていた根はやがて枯れます。結果、長い時間をかけて草木全体が水を得られる方へ動いているように見えます。食虫植物なら、もっとわかりやすいでしょうか。自身の葉っぱに虫が止まったことを知り、葉を閉じて捕捉する動きは技能とも呼べそうです。

 

高校時代は、考えているか、考えていないかで知能の有無が決まるイメージでした。マッチ箱AIの話はよくわからなかったものの、その後、知能とは試行錯誤の結果ではないかと思うようになりました。そこには、実際の試行だけでなく、頭の中で考える"思考"錯誤も含まれる気がします。

 

果たして「自然知能」は存在するのか?

まだまだ私の試行錯誤も思考錯誤も続きそうです。