壮絶な試合をPK戦で制し、アルゼンチンが36年ぶり3回目の優勝で幕を閉じたサッカーW杯。カタール大会はサッカーへの関心が弱まっていた私に、痺れる展開を見せてくれたのでした。
W杯ビフォアー
大会直前まで、日本代表の試合をチョロチョロっと観たら十分という気持ちでした。日本の代表選手も半分くらいしかわかりません。ここ数年、Jリーグの試合も、天皇杯もほとんど観なくなってましたし、海外リーグ戦のチェックもしなくなってました。W杯アジア予選すら、ちょこちょこっと試合経過を気にしたくらい。
加えて、日本のグループリーグには、ドイツ、スペインが同組。勝つのは無理、よくて引き分け。コスタリカに勝てたとしても、1勝1分1敗に持ち込んで、ぎりぎりグループリーグ突破ができるかどうかだろうなと冷めた目で決め込んでました。
優勝予想筆頭は、フランス。続いて、南米勢のアルゼンチンとブラジル、欧州ではスペイン。ダークホースとしてドイツ、ベルギー、ポルトガルという感じ。
注目していた選手は4人。メッシ(アルゼンチン)、エムバペ(フランス)、C.ロナウドとB.フェルナンデス(共にポルトガル)。メッシは悲願のW杯優勝に手が届くか、エムバペはフランスの連覇を達成できるか、ポルトガルのB.フェルナンデスは、スーパー選手C.ロナウドの陰に隠れてしまってる感が強いですが、二人の連動がはまれば優勝の可能性もあるかな?と。
それでも、ダイジェスト等で結果だけわかればいいという程度でした。
W杯グループリーグ
第一戦
大会が始まっての最初の衝撃は、アルゼンチンvsサウジアラビア。優勝候補のアルゼンチンがアジア勢に負けて、がっくり来たのと同時に、W杯は何が起きるかわからないと改めて感じ、もしかしたら大波乱の大会になるかもと思い直しました。それでも、まだこの時はきちんと試合観戦をしてませんでした。
そして、ドイツvs日本戦。
久しぶりに日本代表の試合を開始から終わりまで観ることにしました。フルで代表の試合を観るのはロシア大会のベルギー戦以来かも。
ここでも、欧州強豪を日本が破る波乱。私としては浅野選手(ニックネーム:ジャガー)の活躍が嬉しかったです。Jリーグをよくチェックしていた頃を思い出させてくれました。そして、日本が欧州レベルにかなり追いついたのかもと少し思った瞬間でした。でも、サッカーでは、ジャイアントキリング(弱者が強者に勝つ)はそれほど珍しくないので、過大な期待を持たないようにと自制しました。
ベルギーがモロッコに敗れたのも、ちょっとした波乱。でも、まあ、グループリーグでの取りこぼしもそう珍しくないです。フランス、ブラジル、ポルトガルは順当に勝利。
第二戦
その後、アルゼンチンも立ち直り、波乱は続かない感じに変わってきたところで、日本vsコスタリカ戦。
悪くても引き分け、まあ、勝てるだろうという感じでした。何しろ日本はドイツに勝っているです。ところが、日本は破れ、ドイツvsスペインは引き分けに。グループEは混とんとして、どこが抜け出すのかわからなくなりました。
フランス、ブラジル、ポルトガルは安定した勝利で一次リーグ突破が決定。
第三戦
すでにカタールは、W杯史上初めて開催国でリーグ戦敗退が決定していました。さらに第三戦でも勝てず、勝ち点0も史上初。今大会、勝ち点0だったもう一つがカナダでした。
それ以外では、第三戦は混戦が続きました。日本もスペインに勝たなければ、決勝トーナメント進出は微妙。引き分けだと、同じグループのドイツvsコスタリカ戦の結果次第で変わる状態でした。
強豪のドイツ、スペインに勝ってグループ首位通過です。俄かには信じられない状態。もしかしたら、ベスト8どころか、決勝進出も、何なら優勝しても、おかしくないと舞いあがるほどの快挙でした。
グループリーグ全体でも、たくさんの番狂わせが起きてました。試合順による運もあったかも知れません。8グループ中3勝で終えたチームは一つも無かったのです。決勝トーナメント進出した16チームを大陸別でみると、
欧州(8)、南米(2)、北中米(1)アフリカ(2)アジア(3)
大会の出場枠に変遷があるので簡単に比較はできないものの、アジア勢の健闘が見て取れます。アフリカ勢のモロッコが準決勝に進んだのも光ります。
決勝トーナメント
結果的に、日本はベスト8には届きませんでした。クロアチア相手に先制したものの、同点に追いつかれ、延長戦でも決着がつかず、PK戦の末、敗れました。
ポルトガルは、心配していたC.ロナウドの孤立が起きてしまいました。所属クラブとも諍いが度々ありましたが、代表チームも同様になってしまった様子。才能は誰もが認めているのに、それを十分に発揮できなかったのは残念。チームはスイス相手に大勝しましたが、伏兵モロッコに敗れ、ベスト8止まり。チーム内でC.ロナウドがもっとうまく連動できていれば、更に勝ち進めた気もします。
それにしても決勝、フランスvsアルゼンチンは圧巻でした。
アルゼンチンの2点リードのまま試合終盤を迎えた時点で、フランスのシュート数はわずかに2本。アルゼンチンの守備は予想以上に堅く、思った以上に力の差が出た感がありました。
このまま試合終了かと思い始めたところで、フランスが2人の選手交代。陣形が変わると、フランスの攻め込む場面が増えてきました。そして、PKを獲得。エムバペが決めて1点を返します。そこから、試合の流れは一気にフランスへと傾きます。
メッシがボールを運んでいるところでフランスが奪うと、素早くゴール前へ供給。すかさずエムバペが決め、同点に。PK後わずか1分のことでした。
こうなると、フランスが押し切ってもおかしくないところですが、アルゼンチンも集中力を切らさず、一時防戦一方だったところから、また攻めに転じる場面も出てきます。どちらが先に決勝点を挙げてもおかしくない状況のまま、延長戦に突入。
延長戦後半、ついにメッシがゴールを決め、3-2と勝ち越し。しかし、フランスもあきらめず、試合終了直前にハンドでまさかの2度目のPKをエムバペが決め、ハットトリック達成と共に同点。そのままの勢いで決定的なチャンスを得るものの、今度はGKの神がかり的なセーブに阻まれます。そこからアルゼンチンも決定的チャンスにつなげるもののゴールならず。結局PK戦へ。
PK戦では、アルゼンチンGKが見事なセーブも決め、アルゼンチンが優勝。
思いもよらぬ試合展開に、圧倒されてしまいました。
何これ。終わってみれば、アルゼンチンが2点リードして、フランスに攻め込ませず70分経過するまでが、序盤戦でした。そこからの計50分、一瞬も目の離せない展開が続いたのです。ここまで熱くなる試合も珍しいです。
優勝アルゼンチン。
MVPメッシ。チームメイトを支え、支えられて、悲願の優勝。
得点王エムバペ。追い込まれても跳ね返し続け、決勝戦でハットトリック。
結局、メッシが優勝トロフィー(ジュール・リメ・トロフィー)を掲げるまで、観てました。感慨深かったです。W杯初出場から16年。代表チームで結果を出せないことに悩んだり、チームと距離を取ろうとしたこともありました。代表引退の話や物議を呼ぶ言動もありました。今大会はそれらを乗り越え、チームの一体感も強く感じられました。本当に、おめでとう、メッシ。そして、素晴らしい活躍と結果をありがとう。
W杯アフター
アフターと言っても、決勝戦終了からまだ2日目。いろいろ変わっていくのはこれからですが、メッシのいるアルゼンチンが36年ぶり3回目の優勝したことは揺らぎません。フランスが雪辱を果たすべく4年後の大会を目指すことも間違いないでしょう。
4年後の大会は北中米(アメリカ・カナダ・メキシコの三国共同開催)です。出場国は48ヵ国に増えることが決まっています。ただ、決勝トーナメントを16ヵ国で争う方式は維持する方向のようです。グループリーグの持ち方など不透明な部分もあります。
個人的には、あまり出場国を増やすと、大会の過密日程や試合の質の維持が問題になる気がします。1994年アメリカ大会は出場国が24。1993年のアジア予選、ドーハの悲劇は、アジアからの出場枠がわずかに2だったから起きた事でした。1998年のフランス大会の出場国は32。アジアの出場枠はオセアニアと合わせて4になりました。そのおかげで、初出場を果たせたとも言えます。4年後の北中米大会ではアジア枠が8の予定だとか。
カタール大会の結果を踏まえたFIFAランキングの正式発表は22日の予定ですが、英国の新聞「デイリー・メール」がフライングで記事にしたようです。それによると、今回優勝のアルゼンチンが2位、準優勝フランスが3位、1位にはブラジルが留まる見込み。PK戦での勝利はランキングへの影響が小さいためのようです。日本は大会前に24位だったのが20位になるそう。ドイツは11位から14位に、スペインは7位から10位に後退、アフリカ勢初のベスト4になったモロッコは22位から11位に躍進。
FIFAランキングは国際試合が多いと順位が上がりやすい等の理由で、あてにならないとの意見もありますが、これ以上に分析できているランキングも聞きません。どこまで正確に各国代表の強さを表しているかはともかく、一つの目安としてよく使われています。
この順位もまた動くでしょう。
新しいスターも登場することでしょう。
新しい伝説、新しいスタイルも生まれるでしょう。
今後も楽しみです。
あと、ー4記事。