tn198403s 高校時代blog

「人生に無意味な時間は無い。ただ、その時間の意味を感じることなく生きているだけである。」この言葉を確かめてみようと、徒然なるまま、私の高校時代(1984.03卒業)の意味を振り返り綴るブログです。

映画7.3つの『エデンの東』

テレビ放送で既に観た映画を、改めて映画館で観るという経験はありますか?私は何度か経験があります。その中で印象に残っている一つが、『エデンの東』(1955年公開)でした。主演、ジェームズ・ディーン、監督、エリア・カザン。映画を観たことが無い人でも、私と同じ世代なら、ジェームズ・ディーンの写真やグッズは見たことがあると思います。

 

実は、私が初めて観た『エデンの東』は、1981年にアメリカで製作された8時間ほどのドラマでした。日本では3日に分けて放送されていたと思います。ネットで検索しても、このドラマの情報は少ないものの、「映画よりも良い作品になっている」という感想も見かけます。監督、ハーヴェイ・ハート、 主演、ティモシー・ボトムズ。そしてこのドラマは原作に忠実に作られていたのでした。

 

当時はそんなことを知らず、素直にドラマ『エデンの東』に感動していました。特に印象に残っているのは、「ティムシェル(timshel)」という言葉。(もっとも、当時の私は「ティムショール」と聞き取っていました。)ずっと私の胸に呪文のように刻まれていて、人生に影響を与えてる言葉の一つとも言えるように思います。

 

さて、映画『エデンの東』のテレビ放送は、調べてみると1982年1月17日(日)でした。ドラマ版を見ていたし、有名な映画であることも知っていたので、かなり期待もしていたのですが、放送を観て「名作と言われるほど、面白いとは思えないな。ドラマの方が良い。」という感想を持ちました。当時、下敷きや筆箱などいろんなグッズにプリントされていたジェームズ・ディーンでしたが、何とも演技が大げさ過ぎる気がしたのをぼんやり覚えています。原作に忠実であったドラマ版に対し、原作の1/4程の部分しかない映画版に物足りなさを感じるのは無理からぬこととも思いました。

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 その後、小さな映画館で、ジェームズ・ディーン主演作がリバイバル上映されることになりました。『エデンの東』・『理由なき反抗』の2本立てです。一度テレビで観ていた映画『エデンの東』でしたが、『理由なき反抗』を観たかったので一緒に観ることにしたのです。1982年11月23日(勤労感謝の日)のことでした。

エデンの東』を見終えた後に「やっぱり、ドラマ版の方がいい。」とは思ったのですが、それよりもこの映画が、テレビの放送に比べて、数段良い作品に思えたのが驚きでした。テレビでは演技がかなり大げさに見えたのですが、映画館ではそれを感じませんでした。おそらく、声と演技が一体化しているからだろうと考えました。英語力が無いに等しい私には、英語の台詞で何を言っているのかはわかりません。それで、字幕を目で追いながら台詞というより音声を聞くのですが、音声に込められた感情や演技が伝わるのだろうと思いました。テレビ放送の吹き替えは、聞きながらにして意味が分かる利点はある反面、気づかぬ内に映画から削いでしまっている魅力もある気がしたのです。日本語版より字幕版の方が良いという思いはそれまでにもありましたが、それを強く実感した作品となりました。

 

ところで、このブログに『エデンの東』を取り上げたのには、別の理由があります。私は漫画ビッグコミックをよく読んでいるのですが、現在、山本おさむ氏の連載作品『赤狩り』に 、弾圧を受ける一人として、『エデンの東』の監督、エリア・カザンが描かれているのです。「赤狩り」とは、1950年代のアメリカ、ハリウッドを中心に、共産主義の排除を目的に行われた文化統制、弾圧です。連載を読むまで、その詳しい内容を知らずにいたのですが、赤狩りの嵐が吹き荒れていた時代、この作品を作った監督の意図は何だったかと考えてしまいました。

 

漫画には、ジェームズ・ディーンのことも描かれています。当時、まだ無名に近い彼ですが、既に一部の人には型破りな演技やアドリブは有名だったとのこと。そこに監督や演出上の秘策も相まって、彼の演技がより一層輝くことになったことは初めて知りました。この映画をよく知る人であれば、私がテレビ放送の際に「演技が大げさ過ぎる」と思ったシーンがどこだったか候補が思い浮かぶかも知れません。テレビでは、声と演技がかみ合っていないと思えたそのシーンが、映画館ではぐっと胸に迫るものを感じることができたのは、彼や周りの演技、監督の意図等が見事に調和したからこそのものだったからでしょう。

 

私にとっての『エデンの東』はドラマ版、字幕版、吹き替え版の3つがある訳ですが、一番の作品となると、どうしてもドラマ版です。一番心に残った台詞もドラマ版の「ティムシェル(timshel)」です。でも、『エデンの東』の一番の俳優となると、字幕版のジェームズ・ディーンになります。テレビで観た後でも映画館で観て良かったと思える作品です。

 

 「映画6.『駅 STATION』(降旗 康男監督)」の記事に「映画は観る人の数だけ、そして、観る機会の数だけ違う観方があっていい。」と書きましたが、3つの『エデンの東』もそれを補完しているように思います。漫画『赤狩り』に描かれたエピソードを知った今、そして、ジェームス・ディーン演じる青年よりもその父に年齢が近くなった今、映画『エデンの東』を観れば、また違う感覚になるように思います。いつか機会があれば観てみたいです。