イントロダクション - introduction -
年が明け、1月から新しく始まったドラマの中で、日曜劇場『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』に引き込まれました。一番の理由は、クラシック音楽に関わる内容だからです。第一話「第1楽章 それが彼の運命」では、ベートーベン(先生)の『運命』が取り上げられていました。
このブログでも、何度かクラシック音楽についての記事がありますが、
「クラシック音楽に興味を持つ人は少ない」との思いもあって、2021年以降、話題に挙げずにいました。でも、このドラマを見て(あ~、そうそう!それそれ!)と共感する内容もあって、また書きたくなりました。
1.指揮者への憧れ
ドラマの中で、夜にクラシック音楽を大音量で聞きながら、指揮者の真似をするオーケストラのメンバーが、家族から冷たい視線を浴びせられるシーンがあります。
思うに、クラシック好きで、指揮者の真似をしたことがないという人は少数派ではないでしょうか。ある程度、曲を聞き慣れてくると、(次に、このタイミングで、この音!)と次の音がわかるようになります。
その音、カモン!って感じで曲に乗れる楽しさ。
高校時代、ステレオでカセットテープを再生させながら、何度やったことやら。大音量だと近所に迷惑との思いもあって、ヘッドフォンをつけてやってたら、勢いよく手を振った拍子に端子が抜けて、大きな音が流れてしまい、誰にも気づかれてないはずでも、恥じ入ったこともありました。
2.捉え方は多種多様
このブログでベートーベンの曲として取り上げたのは『交響曲第6番(田園)』でした。
でも、もちろん他の曲も好きなのです。『さよならマエストロ』第一話で『運命』の「ジャジャジャジャーン」の捉え方を奏者それぞれが意見を述べるシーンがあります。そうそう、なるほど、え?等、いろんな反応をしてしまいつつ、そういう受け取り方もありかぁ、と思えるのも、クラシック音楽の魅力だと思うのです。
歌謡曲では、なかなかそうならないと思います。歌詞があること、歌い手のイメージが強く影響すること、その歌が流れるシーンがある程度枠づけられていることなどが大きな理由になるでしょうか。
でもクラシック音楽は、例えば映画『2001年宇宙の旅』や『転校生』、テレビCM等のように、作品に合わせて多様に使われることが珍しくありません。
3.時代と世代と世界を超えて
現代はインターネットの普及で、世界中の音楽をすぐに聴くことが可能になりました。『アナと雪の女王』の主題歌「Let It Go」を多様な国の言語で聞くこともできます。ビートルズの楽曲も50年以上、世界中で親しまれているとわかるでしょう。
それでも、100年の単位で考えた時、世界中で受け継がれている曲となると、クラシック以外ではなかなか難しいのではないでしょうか。(ジャズならあり?)もちろん、「Let It Go」やビートルズが、100年経っても色褪せないことは十分あり得る話です。一部では「ゴジラ」や「スターウォーズ」がクラシック音楽入りしたとの論調もありますから、今後ロック等もクラシック的な位置づけをされて行くかも知れません。とは言え、先はまだ不透明です。
ただ、100年を耐えてなお、演奏され、聴き続けられているクラシックならではの魅力があると思います。
本日放送された『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』第2話では、ロッシーニの『歌劇 ウィリアム・テル 序曲』が取り上げられていました。ここでも、この曲の色んなイメージが紹介されていたと思います。指揮者の夏目俊平が持つイメージ、彼に影響されクラシック音楽に興味を持つようになった女子高生が抱くイメージ、指揮者の娘の響が感じたであろうイメージ…、それぞれに違いがありつつ『ウィリアム・テル』を軸にしているという共通性。
私と同世代なら『オレたちひょうきん族』のオープニングを思い出す人もいるでしょう。でも、曲の静かな出だしを聞いて、違うイメージを持った人も少なくなかったのではと思います。同じ曲に別の表情があるのもクラシック音楽の面白さではないでしょうか。
コンクルージョン -conclusion -
前回の放送で「クラシック音楽好きは全人口の1%もいない」みたいな台詞がありました。あながち間違いではないと思います。でも、恐らくドラマ『さよならマエストロ』は、その1%に焦点を当てたのではなく、残り99%に向けた作品だろうなと予想しています。クラシック好きは1%に満たなくても、99%の内の多くはまだクラシックを意識していないだけで、恐らく、クラシック嫌いは1%よりもっと少ないだろうと思うからです。
どうにも、私にはクラシック音楽の魅力を十分に伝える力がないですが、『さよならマエストロ』では、その魅力を十分に伝えてくれる期待が止まりません。