父の説明は言葉足らずのことが珍しくありません。
「○○○の店まで、車で乗せて行ってくれ。」
と頼まれたものの、私はその店を知りません。
「店はどこにあるの?」
と聞くと、
「道がこうあって、もう一つ道がこうあって、その交差点に信号があってその近くのここだ!」
両手の平で、縦の道に続いて横の道をゼスチャーで示し、人差し指で交差点にある信号の場所を示し、そこから少し離れた所を「ここだ!」と言いながら人差し指でちょん。
それを自信満々で言うのです。
以前から、冗談なのか本気なのか区別がつかない説明が多いので、不意に頭に浮かんだ「父は認知症ではないか」との疑いを頭の中で否定しながら、聞き返します。
「何市?」「●市。」
「バイパスを通る?旧国道?」「バイパスが早い。」
「バイパス沿い?」「だから、バイパスの信号から少し入ったところだ。」
「□□スーパーを超える?手前?」「手前。」
「■■薬局より手前?」「超える。」
およその位置はわかっても、やはり私の知らない店です。
「店の名前、もう一回言って。」「○○○。」
スマホを出して○○○を検索しますが、ヒットしません。
「○○○の店って、出てこないよ。」
「○○○は店の名前じゃない。喫茶店を出してる知人の名前だ。」
「喫茶店の名前は?」「たしか…、△△だった。」
「ああ、わかった。」
そんな感じ。
信号の 近くのここと 言われても