歪みの無い世界地図は無い
高校の地理で、世界地図を習っていた時の話です。
いろんな世界地図があります。ただ、地球が球体であるため、それを平面に描き表そうとすれば、どうしても歪みが出てしまいます。
「その地図が何を正確に表しているのかで、使い方が変わる。」
当時は、そんなものなんだと軽く考えていましたが、詳しく知るほどに地図の奥深さにハマっていった気がします。
メルカトル図法
経緯線は描き込まれていませんが、こんな世界地図を見たことがあると思います。
1569年にメルカトルが作成した地図とされています。緯線(横の線)と経線(縦の線)と緯線が直角に交わっているので、方角を示すのに便利です。また、経線が直線であるため、時差を示す際もよく使われます。図の性質と作成方法から正角円筒図法ともいいます。なんて書いてますが、図法の名前なんて、すっかり忘れていました。
ただし、地球は球体であるため、地図上で直線で結んだ距離と実際の最短距離とで差が出る、高緯度になるほど地形が縦長になり、面積も大きくなるなどの欠点があります。
深まる疑問
1.等角航路と大圏航路
的外れの理由
メルカトル図法の地図では、任意の2点を結んだ直線は、最短距離とはならず、等角航路と呼ばれます。実際の最短距離は地図上で弧を描く大圏航路です。この違いが生じるのは、「球体状にあるものを平面の地図に描くから起きる違い」とは理解できるのですが、当初、私が思いついた理由は、全くの的外れでした。
イラストのように、船だと地球の球面になっている海面の上を航行するために長くなり、潜水艦なら最短距離を進めるんじゃないかと思ったのです。その瞬間、いやいやいや…と自分で否定しましたが、不思議なことに、記憶から消えずに残ったままです。
もし、イラストのように潜水艦が進める海があったとして、その中間点の水深はどれほどになるか。圧力も引力も凄まじく、二度と浮き上がってこれないでしょう。イラストの赤点は日本側は志摩市、アメリカ側はロサンジェルスでほぼ同緯度にある設定ですが、その距離は約9000km。地球の半径は約6400km、一周で約4万km。深さ何千メートルではなく、何千kmって話ですね。地球が欠けてしまいます。
正しい理由
答えを先に書けば、メルカトル図法は緯線(横線)、経線(縦線)が直角に交わり、どの緯線も同じ長さであること、球面を平面に描くことの矛盾が大きく影響しています。
地球儀を見ればわかりやすいですが、経線はどの線も北極から赤道を通って南極に向っており同じ長さです。一方、緯線の場合、赤道が地球一周分ですが、高緯度になるほど緯線の円周は短くなり、北極点では消滅します。また、経線は本来、どの緯線の間でも同じ長さですが、メルカトル図法では、高緯度になる程、経線が長くなっています。
球面と平面の違い
「3つの直角を持つ正三角形」をすぐイメージできるでしょうか。平面ではあり得ないその図形が、球面では普通にあり得えます。地球を完全な級と仮定した場合、例えば、北極から赤道に真っすぐ進み、そこから直角に折れて赤道の4分の1を進んで、直角に折れて北極に向かったときの軌跡は、「3つの直角を持つ正三角形」になります。
これでわかると良いのですが、下手な図と説明で申し訳ないです。
わかりやすい、こちらのサイトを紹介しておきます。
2.南北の長さと東西の長さ
地球は南北に長い?
メルカトル図法で、南北を見ると地図の上辺は北極に、下辺は南極になることは自然に受け止められます。更に、地図には描けていないものの、終着点がそれぞれ北極点、南極点になることにも違和感がありません。
では、東西ではどうでしょう。地図では、緯線同士はずっと平行です。でも、上述した様に、緯度0度に当たる赤道が一番長く、緯度が上がるほど短くなります。東極点、西極点とは聞いたことがありません。
経線はどれも同じ長さで、どれも地球の円周です。でも緯線は長さが違い、地球の円周にはなっているのは赤道だけです。言い換えれば、南北はどこでも地球をぐるりと回って同じ長さなのに、東西は緯度によって地球一周の長さが違うことになります。南極点付近だと、地球一周歩くのに1時間もかからないという理屈です。
地球が完全な球ではないとしても、南北は4万kmなのに、東西は4kmしかない地点があるというのはあまりに歪ではないでしょうか。それなのに、メルカトル図法ではどの緯線も同じ長さに描いています。それで方角を正しく表せるのでしょうか?
横メルカトル図法
高校時代にはこの疑問の答えは見つけられませんでした。後に、横メルカトル図法を知ります。
これを見ると、子午線付近だけが見慣れた地形や大きさです。メルカトル図法ではオーストラリアよりグリーンランドの方が大きく見えましたが、横メルカトル図法では大逆転です。そして、子午線から離れる程に歪に見えます。特に南アメリカ大陸の大きさとユーラシア大陸の小ささに違和感があります。
この地図だと、東西の長さ(楕円形)は高緯度程短くなっているのがわかります。
画像は「 横メルカトル図法 - Wikipedia 」より。
人工衛星の地上軌跡
地球を周回している国際宇宙ステーション(ISS)や人工衛星の軌道を真下の地表に降ろした軌跡が、グランドトレース(地上軌跡)と呼ばれます。
この地上軌跡は地球儀の上では円ですが、正距円筒図法(Equirectangular)の世界地図の上に表すとSの字を描いたカーブになります。
図と文章の引用元はこちら。
人工衛星の軌道は、基本的に地球の中心と重なります。ただ、地球が自転しているので人工衛星が地球を一周した時には、元の位置からずれます。そのため地図上では幾つものS字状の軌跡を描きます。赤道(緯度が0度)上の衛星であれば、緯線上を通り続けることができますが、それ以外ではS字を描きます。
この図を見ると、地図の東西を示す緯線が、地球の中心からずれていることが見て取れます。
日本の真東はどこを通るか
つまり、地図上の東西南北と、地球を球体として考えた時の東西南北に差ができることになります。このことに違和感を感じなくなったのは、ヘールボップ彗星が肉眼で見えるようになった頃でした。一時期、星空を見ることにハマりました。
あらためて、地球的視点で日本から東に向かうか、上の「 地理Bの部屋 」からスクリーンショットを引用します。
日本の東は、北アメリカではなく、南アメリカということになります。
地図の世界
地図について簡単な記事にするつもりが、メルカトル図法に触れると一気に書きたいことが思い起こされて、思いの外長くなってしまいました。本当は、他の図法も一度に書く予定だったのですが、今回はメルカトル図法のみとしました。
便宜上、地図から広がる世界(1)としましたが、(2)以降は未定です。
あと17記事。