tn198403s 高校時代blog

「人生に無意味な時間は無い。ただ、その時間の意味を感じることなく生きているだけである。」この言葉を確かめてみようと、徒然なるまま、私の高校時代(1984.03卒業)の意味を振り返り綴るブログです。

tn94.朝ドラ『まんぷく』から、餓死した裁判官の話、再び。

餓死した裁判官の話 

今、NHKBSで朝の連続テレビ小説まんぷく』が再放送されています。『まんぷく』は、インスタントラーメンを世に広めた日清食品の創業者安藤百福さんとその妻をモデルにしています。

カップ麺 イラスト

12月2日の放送、54話「違うわ、萬平さん」の中で、餓死した裁判官のエピソードがありました。おそらく、山口良忠裁判官の話をベースにしているのでしょう。以前、記事にしたことがあります。

終戦直後の食糧難の時代です。

配給の食糧さえ国民の手に渡るまでに次々中抜きをされていきます。配給ルートの確保が難しいとして、戦後直後の混乱期に国民の手に渡る食料は粗末になり、届くまでにも何日もかかりました。結局、多くの人が飢えで亡くなっています。闇市で食料を得ないと生きていけない現状を訴えても声は届きません。法の番人として正規のルートで手に入るものしか口にしなかった山口良忠裁判官は1947年10月に餓死しています。配給だけでは生きていけなかったのです。

 

高校の政治・経済の授業で、先生から、

「間違った法律でも守らないといけないか。」

と問われ、悩んだことを憶えています。その後に聞いた餓死した裁判官の話で、一層悩みました。当時の私に答えは出せませんでした。そして、

先生は間違った法律でも守らないといけないかについての答えは出さず、間違った法律を作らせないことを主権者である国民は目指さないといけない、そんな話で締めくくっていました。

 

まんぷく』で呼び起された記憶が、このところの、もやもやしてしまうニュースと重なりました。

 

中東での日本の立ち位置

ハマスイスラエル軍の戦闘では、7日間の戦闘休止が終わり、再びガザ地区への攻撃、実質的には虐殺が始まっています。先にハマスイスラエルを攻撃し、多数の死者を出し人質を取ったことは正当化できませんが、イスラエル軍がそれへの報復として壁で閉じ込めたガザの民間人を虐殺することも正当化できません。イスラエル側に立つアメリカの姿勢をそのまま受け入れ、日本政府が休戦、停戦を言わないことに強い疑問が湧くのです。

ガザ地区では、終戦直後の日本以上の食糧難、飲料水不足、エネルギー不足にあるでしょう。その窮状を前に、政府の姿勢が終戦直後に十分な配給をしなかった政府と重なって見えてしまうのです。

 

かつて日本は中東情勢についてはむしろ、中東とアメリカの間で微妙な関係のバランスを保とうとしていたイメージがあります。石油輸入など経済的な理由があったにせよ、中東諸国への配慮がありました。

 

2017年9月11日、当時の河野外務大臣は、第1回日アラブ政治対話のスピーチで、日本としての中東の位置づけについて述べました。

日本にとって中東は,経済と繁栄の土台です。中東は,日本のエネルギーの主要な供給先であり,中東地域からのシーレーンは物流の上でも極めて重要です。さらに,地域の平和と安定は日本の経済・社会はもちろんのこと,安全保障にも直結する問題です。 

その上で、日本の役割についても触れています。

日本は,イスラム教,キリスト教ユダヤ教の人々のいずれとも良好な関係を築いてきました。そして,この地域に大きな影響力を有する米国と率直に議論を行える国でもあります。このような独自の立場を活かして,より一層中東の平和と安定の実現に役割を果たしていきたいと考えています。

幾らかのリップサービスはあったとしても、この話は記憶に残っています。中東への日本のスタンスは変わっていないというイメージでした。

 

しかし、今、米国と率直な議論を行える国としての立場はどうなったのかと疑問を感じずにいられません。

 

生活保護支給額引き下げを巡る訴訟

日本では、2013年から2015年にかけて生活保護の支給額が最大で10%引き下げられました。これに対し、11月30日、名古屋高等裁判所が「著しく合理性を欠き、裁量権を逸脱している」として引き下げを取り消し、国に賠償を命じる判決を言い渡しています。

 

これは、物価が下がる「デフレ調整」と合わせて、生活保護受給世帯と一般の低所得者世帯の生活費を比べて見直す「ゆがみ調整」を反映したものです。一般の低所得者の生活費が低いのであれば、低さを是正する方向に動くべきですが、生活保護費の基準額を下げる改定をしています。

 

生活保護支給額引き下げの傾向はその後も続き、近年は円安や物価の急上昇の影響もあり、深刻さを増しています。

 

こども食堂

「認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ(湯浅誠さん)」によれば、2022年12月の時点で7,363箇所になったとのこと。2012年に始まったとされるこども食堂は短期間で急速に広まっています。もとは、東京の八百屋の店主が貧困や親の多忙からご飯を満足に食べていない子どもが多くいることを知り、自らが経営している八百屋の一角に子どもたちが食事をできるスペースを設置したことがきっかけだそうです。

こども食堂の増加

( グラフ引用元: 2022年度こども食堂全国箇所数発表(2023年2月 確定値)|新着情報 – むすびえ )

 

こども食堂が始まった2012年、過去一年間に経済的な理由によって食料が買えなかった経験を持つ世帯が14.8%だったとのこと。その後の急増は、上述したように生活保護の支給額が減額されたことも影響していると思われます。また、こども食堂は、子どもを対象として始まりましたが、高齢者が参加する子ども食堂もあり、参加者の9割が高齢者という場合もあるそうです。

 

貧富の格差拡大

高齢者が増え、生産年齢人口が減り、少子化が進む現状の中で、生活保護の削減も止む無しとの声があるのは承知しています。しかし、本来なら正規として雇うべき者を、非正規として雇用して低賃金にしその分を内部留保に回す企業、消費税を上げる一方で法人税所得税を下げる富裕層に有利な税制、目に余る中抜きなどの利権等、貧富の格差が広がるばかりの現状を無視することはできません。

 

これは、戦争直後の貧富の格差に権力者が目をつぶったことと重なる部分を感じます。それでも、戦後は新しい世代が育ち、復興を成し遂げました。今は、次の世代が育てられていない点でより深刻と言えるかも知れません。

 

戦後、法の番人として違法な闇市で食料を得ることを拒み餓死した裁判官は、その時代を象徴しています。でも、忘れてならないのは、そんな社会の下で餓死した市民、子どもが数多くいた事実です。

 

今、法に従わず、或いは法の目をかいくぐって大きな富を手にする者達がいる一方、満足な食事を手にできない人が増えています。そして、そのことに疑問や問題を感じない人も増えている気がします。そこがどうにも、もやっと気になって仕方ありません。

 

朝ドラ『まんぷく』は、そうした世を救いたいと立ち上がった人を描いているドラマです。将来、今の世を救いたいと立ち上がった人を描くドラマは作られるでしょうか。

 

40年前に高校の先生が言った「間違った法律を作らせないことを主権者である国民は目指さないといけない」との言葉が、重く感じられてしまうのです。人の命と暮らしを守ることを置き去りにしてはいけない、改めてそう思います。

 

 

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