tn198403s 高校時代blog

「人生に無意味な時間は無い。ただ、その時間の意味を感じることなく生きているだけである。」この言葉を確かめてみようと、徒然なるまま、私の高校時代(1984.03卒業)の意味を振り返り綴るブログです。

tn93.ツバメと人の共存。大阪府と石川県の話

5ヵ月前、ツバメの記事を書きました。

私が小さかった頃にツバメが苦手だったこと、後に興味を持って観るようになったこと、またツバメに関する話題も幾つか書きました。今回は、大阪府と石川県の事例からツバメの人の共存について考えてみました。

大阪の大型商業施設での事例

実は、こんなニュースを発見しました。

jisin.jp

大阪北部、千里中央駅に直結する大型商業施設「せんちゅうパル」で、天井から逆さまにぶら下げられた水玉の赤い傘に、4羽のツバメが止まっている写真が話題になっているとのことです。「せんちゅうパル」は半屋外空間に各テナントが軒を連ねて集まる「オープンモール」であることがツバメの営巣に大きく影響しているとのこと。人もツバメも出入りできる空間だからでしょう。

 

すぐ近くには雛がいる巣があり、“逆さ傘”がツバメを守る役目も果たしていますが、本来は施設に出入りする客への糞被害を防ぐ、美観維持のためといいます。この守り傘にも賛否両論あり、ツバメを歓迎する人、嫌がる人がいるようです。幼い頃にはツバメが怖く思え、後に興味を持った私なので、どちらの考えもわかる気がします。

 

また、防災設備の妨げになる場所の巣は阻止したり、場所によってはカラーコーンで注意喚起したりしているそうです。やはり、歓迎しつつも一定のルールは守る必要があるのも頷けます。

 

ツバメは、人の行き交う場所で他の大きな鳥から守ってもらいながら生きてきた歴史があります。また、田畑の害虫を駆除する等、ツバメが人間の生活に役立ってきた歴史もあります。しかし、農業を営む人が減る一方で、都会でゴミを荒らすカラスの問題等もあり、人間と鳥の関係にも変化が生じていると思われます。農家の軒先に白い糞が落ちているのと、ビル街の舗装された道についた白い糞、同じように受け止めるのは難しそうです。

ツバメのひな イラスト

 

石川県のツバメ総調査

調査の概要

石川県で、長く続く小学生によるツバメ調査です。今年で50回目とのこと。

ニュースのリンクはこちら。

newsdig.tbs.co.jp

一部引用

10日から愛鳥週間がスタートし、石川県内の小学校では恒例のツバメ調査が始まりました。

県内各地の小学校で始まったのは「ふるさとのツバメ総調査」

金沢市の安原小学校でも6年生およそ60人が校区を周り、ツバメの巣の数、場所などを調べました。

 

ツバメ調査についての詳しい内容はこちらから。

www.pref.ishikawa.jp

白状します。この調査のことを知ったのはずいぶん前です。近年にも何度か訪れたサイトでしたが、今回改めてアクセスして、私の認識の甘さを知りました。正直、「大人がやたら熱心なので、とりあえず小学校でも調査をやっています」、「愛鳥週間で注目も浴びるので、イベント化しています」くらいのものだと思っていました。

 

サイトを詳しく観てみると、小学校で扱う説明用の『「ツバメ調査」学習資料 【学校の先生用】(ppt)』(パワーポイント資料)を発見。それを見るとどんな調査なのかが伝わってきます。事前に詳しい説明をし、調査の目的や意義も理解した上での取り組みのようです。その中で、

☆外に出て、本物、実物にふれることで、
「自然は様々なつながりの中で成り立っている」
ことを知ることができます。(生物多様性を体感)

として、自然環境と人間の暮らしの関係にも光を当てていました。初めて知った内容も多かったです。私にはコシアカツバメとイワツバメの区別なんてつきません。ここまで丁寧な調査を全県で50年も取り組んでいるなら「石川県のツバメ文化」と呼べそうです。

これまでの調査結果から

ツバメを歓迎する人

ツバメ調査には、ツバメ文化を紡ぐ効果があるのかも知れません。

石川県の1972年(S47)から現在までの経年変化 から、2001年より始めた意識調査で「ツバメを歓迎する人」の割合を抜粋しました。(※コロナの影響で、2020-2021の調査は中止、2022は一部の調査)

ツバメを歓迎する人の割合

そこでは、歓迎する人が概ね75~85%の間を推移しています。年ごとに児童と地域の方々で歓迎する率が高い方を薄桃色にしました。2001~2012年までは児童が高く、それ以降地域の方々の方がい傾向にあると分かります。何だか、かつては子どもがツバメに興味津々で歓迎率が高く、それに地域の人が引っ張られていたのが、やがて地域の人の方が意識が高くなり、子どもを後押ししているようなイメージになりました。まぁ、統計的には誤差の範囲内と言えそうですが。

 

実際には、調査をする児童は毎年変わっているはずで、質問した地域の方が同じ人かどうかも不明。そのため、はっきりとは言えないまでも、ツバメ文化はなお健在と言えそうです。

 

ツバメの確認数

一方で、実際のツバメの確認数は減少傾向にあります。石川県の1972年(S47)から現在までの経年変化 から、ほぼ5年ごとの数値を抜粋しました。

石川県ツバメ調査 経年変化

2016年のツバメ成鳥確認数はピーク時の約3分の1にまで減っています。児童数の減少も顕著なので、どこまで正確な数なのかは気になるところですが、かなり減少していることは確かでしょう。

 

ツバメと人との共存

児童による調査からツバメの減少は確かなことだと思われますが、その理由までは明らかになっていません。それでも、幾つかの考察はできそうです。

 

1.エサや巣作りに使える材料の減少

農薬の使用によってエサになる虫が激減したこと、そもそも田畑の減少してエサが得られにくくなったことが考えられます。また、機械化により巣作りに適した稲わらや、農薬等により適した泥等が入手しにくくなったこともありそうです。

 

2.巣作りに適した土間や軒先等の減少

近年の住宅には、土間がありません。私の父や母の実家も、かつては土間がありそこに巣を作っていました。普段から戸を開け放していたり、戸に穴があってそこから出入りできてたのです。でも、建て替えをしたときに土間は消え、戸を開け放つことも、自由に出入りできる穴も無くなりました。軒先も、雨宿りができる程の家は見かけなくなりました。農具を入れておく納屋も減りました。それらが影響している可能性は大きいでしょう。

 

3.トキの復活に学ぶ

上述の1.2はツバメの減少を証拠づけるものではありませんが、佐渡島で一度絶滅したトキが復活しています。

2003年に日本のトキは一度絶滅しています。その後、中国から提供を受けた親鳥から繁殖と放鳥を繰り返し、現在、推定約480羽のトキが佐渡にいるそうです。

2004年、台風により水稲に大きな被害を受けました。これを転機にして、環境保全型農業に転換し、トキの野生復帰事業を本格化したそうです。そこでの取り組みを引用します。

島内の田んぼや畦をトキの餌場にするため、「農薬や化学肥料を5割以上減らす」「除草剤はまかない」「田んぼで生き物調査を年2回行う」「水路の設置」など5つの技術要件を1つ以上行う、といった厳しい条件の下で栽培されたコシヒカリなどの米を市が認証し、「朱鷺と暮らす郷(さと)」(通称「トキ認証米」)と銘打って売り出した。

とのこと。その後、「トキ認証米」は、全国的に販路を広げ、軌道に乗っているそうです。地域の地道な努力があってこその結果だと思いますが、このことは、人との共存の一つの鍵と言えるでしょう。

 

ただ、ツバメと人の共存を、単に人の住む場所の近くでツバメが増えればいいと考えるのは早計に過ぎると思っています。ツバメに限らず、理想的な動物と人間の共存のあり方や距離感は、変化し続けています。その辺、また別の機会に記事にしてみたいです。

 

 

 

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