覆水盆に返らず
「覆水盆に返らず」は、ことわざの一つで、「一度起きてしまったことは元に戻らない」との意味で使われています。
ここでの「覆水」とは、大抵「良くないこと」を指すようで、「盆に返らず」は「残念ながら、もうどうしようもない」とのニュアンスです。
で、諺の由来を見てみました。
夫を見限った妻は、離縁して家を出て行く。後に、夫の昇進を知って戻り復縁を願う。夫は、水の入った盆(ボウル状の容器)を持ってきて、水を床にこぼし、「この水を盆の上に戻してみよ。」と女に言う。戻すことができない女に「一度こぼれた水は二度と盆の上に戻ることはない。」と復縁を断るのである。
あまり好感の持てる話ではないですが、言いたいことはわかります。別の言い方なら「後悔先に立たず」となるでしょう。
ハンプティ・ダンプティ
ハンプティ・ダンプティは、マザーグース(イギリスで口承にされてきた童謡等の総称)の中にある歌です。
この歌をヒントに、高校の文化祭に向け、劇の脚本を作ったことがあります。
原文と訳です。
Humpty Dumpty sat on a wall,
Humpty Dumpty had a great fall.
All the king's horses and all the king's men
Couldn't put Humpty together again.
ハンプティ・ダンプティ 塀の上
ハンプティ・ダンプティ 転がり落ちた
王様のお馬をみんな集めても
王様の家来をみんな集めても
ハンプティは元にはもどらない
※訳は谷川俊太郎さんながら、記憶がやや不明確
この歌も、「覆水盆に返らず」に通じるものがあり、悲しみに暮れて終わっています。これを劇の脚本にする際、悲しむだけで終わらないよう、続きを加えました。
お馬も家来もみんな悲しんで
ハンプティは安らかに旅立ちました
としたのです。悲しみから前を向こうとの意味を込めました。
It is no use crying over spilt milk.
後に、英語に" It is no use crying over spilt milk. "の諺を知ります。直訳すれば「こぼれたミルクを嘆いても無駄だ」と言う意味ですが、我が意を得たりという感じがしました。
この英語の諺を「覆水盆に返らず」と同じ意味とする人もいますが、私は少し意味が違うと感じたのです。悲しみに暮れて終わるのではなく、悲しみに暮れていても仕方がないから前を向こうという意味にとりました。
「こぼす」のイメージ
1980年代、「落ちこぼれ」という言葉をよく耳にしました。本来は、容器からこぼれ落ちた物という意味でしたが、学習について行けない、成績が良くない子を揶揄する意味で広く使われるたイメージです。
私も高校時代は「落ちこぼれ」にならないようにと、必死でした。進学校でありながら、入学早々、進学は無理でしょうと言われました。実際、成績は低迷していました。それでも、足掻くように学習して、幾らか展望も見えかけていたのですが、現役で大学合格とはなりませんでした。1浪してなんとか合格。
そんな中、「落ちこぼれ」は子どもの意欲を奪う表現なので、教育する側の責任として「落ちこぼし」と表現した方が良いという話が出てきました。
高校時代に「落ちこぼれ」ではなく「落ちこぼし」と言われていたら、少しは気が軽くなったでしょうか。このことは、何か引っかかったままです。自分でこぼれたのか、誰かにこぼされたのか。前者なら、自分で何とかしなければと奮起しないといけませんが、後者は誰かに拾ってもらうのを待つような感じに思えて、もやっとしてしまうのです。
教員の立場から「落ちこぼし」と考えるのは、成績の低い子を放置しないという意味に思えるので問題はない気がします。でも、生徒の立場からすれば「落ちこぼし」は、捨て置かれているという意味にも思え、「落ちこぼれ」より絶望感が増しそうに思えます。
まあ、こぼれたにせよ、こぼしたにせよ、結局、嘆くばかりでは何も好転しないので、前を向きたいものです。
「おきあがりこぼし」
「おきあがりこぼし」という玩具があります。人形に重りが仕掛けられていて、指で倒しても起き上がってきます。台の上で倒したら、下に落ちこぼしそうになりますが、起き上がるので、「おきあがりこぼし」。
ずっとそう思ってました。今回お題が「こぼしたもの」だったので、改めて検索してみました。結果、全然、違ってました。
みなさんはご存じでしたか?「おきあがりこぼし」を漢字を使って書くと「起き上がり小法師」でした。「こぼし」違いだったのか…と、今更、愚痴をこぼしても始まりません。
以上、「こぼす」あれこれでした。
今週のお題「こぼしたもの」
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