tn198403s 高校時代blog

「人生に無意味な時間は無い。ただ、その時間の意味を感じることなく生きているだけである。」この言葉を確かめてみようと、徒然なるまま、私の高校時代(1984.03卒業)の意味を振り返り綴るブログです。

tn83.憲法記念日に思う

昨日、5月3日は憲法記念日でした。

5月3日は憲法記念日

NHK世論調査で今の憲法を改正する必要があると思うかどうか聞いた」というニュースに違和感がありました。憲法の内容よりも、改正の必要性の有無を聞くのが憲法世論調査の特徴になった印象です。

 

調査した時期は4月7日~9日。対象は18歳以上の3275人。固定または携帯電話にRDD(コンピューターで無作為に数字を組み合わせて番号を作り、電話をかけて調査する方法)で行われました。回答は1544人(47.1%)とのこと。ずいぶん低い(選挙の投票率も同様ですけど)と思ったことが、記事を書くきっかけになりました。

NHK世論調査の回答率

わかった範囲でNHK憲法に関する過去の世論調査の回答率を拾ってみました。

2007年 対象2,458人 電話法(RDD)1,486人(58.3%)からの回答。

2017年 対象 住民基本台帳から層化無作為2段抽出 4,800人 個人面接

    有効数(率) 2,643人(55.1%

2022年 対象2,978人 電話法(RDD)1,508人(50.6%)から回答

今年50%を切ったのは、いろんな要因がありそうです。思いつくだけでも、携帯電話に不明な電話番号からかかってきても応答しない人が多いこと、さらに憲法世論調査に関心がない人、世論調査の話に受け答えできる状況に無い人…。

2017年は面接法での調査ですが、それでも有効回答率は55.1%と低め。憲法に無関心な人が増えてきた印象が拭えません。

 

内閣府世論調査の回答率

昭和40~46年(1965~1971年)に政府(内閣府)が行っていた世論調査の回答率も見てみました。この間は同様の調査がされていたようです。

対象は、層別2段無作為抽出で全国に居住する満20才以上の男女2万人
調査員による個別面接聴取で行っています。

憲法に関する世論調査 (調査 昭和40年) 有効回収数(率) 15,863人(79.3%)

憲法に関する世論調査 (調査 昭和41年) 有効回収数(率) 16,296人(81.5%)

憲法に関する世論調査 (調査 昭和42年) 有効回収数(率) 16,118人(80.6%)

憲法に関する世論調査 (調査 昭和43年) 有効回収数(率) 16,527人(82.6%)

大掛かりな調査で、回答率は80%前後。

調査対象規模が3000人に抑えられた昭和46年も

憲法に関する世論調査 (調査 昭和46年) 有効回収数(率) 2,496人(83.2%)

と80%超え。

 

調査年によって調査項目に多少違いがありますが、細かく聞いています。

 

例えば、昭和41年(1966年)の調査。

Q2    あなたは、今の憲法を少しでも読んだことがありますか。
        読んだことがある (37.3%)      読んだことがない  (62.7%)   

憲法施行から19年経過した年です。中高年以上の人なら、学校で習っていない可能性もありますが、それでも37%は低い気がします。

昭和46年(1971年)、憲法施行後24年の調査では

Q2    あなたは,今の憲法を少しでも読んだことがありますか。
      読んだことがある (40.9%)   読んだことはない  (59.0%)  

と、変わっています。調査方法が違うので、単純な比較はできないものの5年間で3.6%増。この頃、毎年新成人を迎える人が200万人超いた中で、0.7%ずつしか増えていないのは少ない気がします。

 

現在、学校で憲法を学んだ人はほぼ全員に近いはずです。同じ質問をすると「読んだことがある」は、ほぼ100%になるはずだと思っていましたが、意外と低い数字が出る気もしています。

 

憲法の理解と投票率

2017年のNHK世論調査(個人面接)の内容です。

第2問 リストの中で、憲法で決められているものはどれだと思いますか。3つまでお答えください。
1.国民主権 69.7%
2.国民の祝日 25.4%
3.国歌 9.8%
4.基本的人権の尊重 82.0%
5.未成年の飲酒禁止 20.1%
6.戦争の放棄 69.7%
7.わからない、無回答 3.1%

ちょっとしたクイズみたいな問いです。いわゆる憲法三原則(太字項目)を理解している人は多いと言えそうですが、十分かとなると疑問があります。

 

近年、選挙の投票率低下が著しいです。2023年の地方統一選では

総務省のまとめによりますと、(4月)23日投票が行われた統一地方選挙の後半戦のうち、55の町村長選挙の平均投票率は60.79%とこれまでで最も低かった前回・4年前を4.32ポイント下回ったほか、280の市議会議員選挙が44.26%、250の町村議会議員選挙が55.49%と、いずれも過去最低でした。

統一地方選 市町村議選・町村長選の投票率 過去最低 | NHK | 統一地方選 より)

 

また国政選挙では

https://www.soumu.go.jp/main_content/000824111.jpg

( 総務省|国政選挙における投票率の推移 より)

2017年に憲法国民主権が大事な内容として理解している人が69.7%いながら、近年の投票率は60%にも及ばず、過半数以下の場合も。もやっとしたものを感じます。

 

一部では「国民主権なのだから、投票しない権利もある」等とする論調も見かけますが、そうでしょうか。

 

投票は本人の自由です。

しかし、投票しないことは自由を放棄する自由に近く、矛盾していると思います。

投票率の低さからも、憲法国民主権の理解は不十分と言えそうです。

自由意思の下で投票率が高い状態にする努力が必要でしょう。

投票率が高いのが良いとして、投票の強制が行われる国もありますが、これは論外。)

 

憲法を今一度読み返す

今回、久しぶりに憲法を読み返してみました。少し抜粋します。

 

国民の厳粛な信託(憲法前文より)

そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。

投票率が60%に満たない場合、過半数以下の場合、一票の格差が2倍以上、小選挙区死票の多さ等もそのままに「国民の厳粛な信託」を得た言えるのかどうか。低投票率の指摘はされるものの、投票時間を延ばす、期日前投票を可能にする等、改善の手立てはかなり限定的です。選挙の関心を高める、政策をわかりやすく解説するなどの工夫はほとんどありません。低投票率でいいと言う議員がいる始末です。加えて、贈収賄や旧統一協会との関係も有耶無耶にされている感も強いです。

 

また、国民が福利を享受できる政治になっているかも、疑問です。五輪汚職やコロナ対策費の使途不明等、中抜きや賄賂の疑惑は山積しています。「国民の厳粛な信託」を無視して、知る権利に応えず、説明責任を果たさず、国民に負担を強いる現政権の言う改憲が、何を目指しているのか、きちんと見る必要があるでしょう。

 

第十二条〔自由及び権利の保持義務と公共福祉性〕

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

自由及び権利が「国民の不断の努力」によって、保持できているかも疑問です。最近、マスコミの報道が政府の広報に近い感じを受けます。

 

NHK世論調査で今の憲法を改正する必要があると思うかどうか聞いた」ニュースに違和感を抱いた一番の理由です。まず、「憲法は守られているか」という視点から報道すべきだと思うのです。マスコミも国民の側に含まれます。知る権利、報道の自由を保持するための「不断の努力」をするべきでしょう。

 

第九十七条〔基本的人権の由来特質〕

この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

憲法の精神を簡潔にまとめた条文だと思います。とても重要な条文です。

 

歴史を直視し、試練に堪え、戦後の復興や平和を支えてこれたのも、憲法のおかげだと言えるでしょう。いくら自主憲法を作るのだと吹聴しても、それが明治憲法を回帰し、自由と権利を奪う憲法なら認められません。古い、新しいの問題ではなく、根本は国民の自由と権利を保障するかどうかの問題だと思います。

 

第九十九条〔憲法尊重擁護の義務〕

天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

これが、まず「憲法は守られているか」と大きく問うて欲しい根拠です。

 

憲法世論調査について

最近の憲法世論調査は、改憲か否かに注目している印象です。NHK世論調査で今の憲法を「改正する必要があると思う」は35%、「改正する必要はないと思う」は19%でしたが、読売新聞社では、憲法を「改正する方がよい」61%「改正しない方がよい」33%、毎日新聞社では憲法改正「賛成」35%、「反対」47%とばらつきがあります。これを見て、一喜一憂しそうになりますが、少し冷静に見た方が良いと思います。

 

長い期間で振り返ってみると、改憲の賛成反対にも波があることがわかります。2005年頃に国民の過半数改憲賛成になったと大きく報道されましたが、それ以降はむしろ改憲に慎重な意見が増えました。今回のNHKのニュースも、依然として改憲賛成が反対より多いものの、この傾向を引き継いだ結果になっています。

 

最近のNHK改憲側に思えることもあるので、下の記事もやや否定的に読みました。

そこでは、上述した内閣府世論調査があった頃(1970年前後)は、改憲に賛成する世論の方が多くなっていました。もしかすると、世論調査自体、改憲の機運を探るものだったかも知れません。

 

興味深いのは改憲が現実的な話になってくると、反対や慎重派が増えてくることです。世論調査で一時的に改憲機運が盛り上がったように見えても、一気に改憲にまで突き進んではいません。もちろんそこには、反対側から強い声をあげた影響もあるでしょうが、その背景には、憲法自体の理解が余り定着していないことがありそうです。憲法の賛否を問う前に、憲法の理解を広げることが大事なのではないでしょうか。のんびりしているわけにもいきませんが、理解を深めて確信を持つことを疎かにしてはいけないと思いました。

 

憲法記念日憲法を読み返す日に

成人してしばらくの間、「憲法記念日」は憲法を読み返す日にしていました。しかし、前文と百三条からなる憲法を全部読むのは、結構大変。いつのまにか「前文だけでいいか」となり、やがて、それさえしなくなっていました。

 

今回、読み直してみて、「不断の努力」の難しさと大切さが身に染みました。

そこで、せめてこのくらいはと思った部分を中心に記事にしてみた次第です。

思いの外、長文になりましたが最後まで読んでいただきありがとうございました。