記憶と計算
かけ算を暗記する
中学校の数学で、11~15までの2乗は憶えた方が良いと言われました。この先、数学の問題を解く際に比較的目にすることが多いからという話でした。私は素直に暗記したのですが、抵抗を感じる生徒が少なからずいて驚きました。
かけ算九九は0の段、10の段まで含めると121の計算を暗記することになります。とても多い気もしますが、日本では一般に、かけ算九九(0の段、10の段を含むことが多い)は暗記するまで教えられます。一方で、11の段以降の暗記は求められません。後に気づいたのですが、暗記していないかけ算の答えを出すには計算が必要になります。これが抵抗感の元になり、後に暗記だけで解けない計算を避ける、できないと思うことが増えていくように思われます。
私が中学時代に暗記したのは、11×11=121、12×12=144、13×13=169、14×14=196、15×15=225だけです。小学校時代に121のかけ算を覚えたのに比べて、わずか5つ。でも、この5つを覚えたことはとても役に立ったと思うようになりました。それは、5つを記憶したことより、かけ算九九からはみ出る計算にあまり抵抗を感じなくなった気がするからです。
11から15までの2乗
高校時代、どこで知ったのか不明ですが、かけ算を面積で考える話を知りました。こんな図です。11×11から15×15までを面積の図にして一部色を付けています。
図から法則性が見つかるでしょうか。
11×11だと、100(水色)と10(白)と10(白)と1(桃色)、
12×12だと、100と20と20と4、
13×13だと、100と30と30と9、
14×14だと、100と40と40と16、
15×15だと、100と50と50と25、
となります。
つまり、
十の位が1の数字1?を2乗した場合は、100と?の10倍の2倍と○の2乗の合計
ということです。これを利用すると、
16×16だと、100と60の2倍(120)と36、となり、256とわかります。
で、256という数を見て、あ!8bit(2の8乗)の色数だと思い出します。
意外と身近な数字でした。
なお、この計算は
(10+?)の2乗=(10+?)×(10+?)=100+(2×?×10)+(?の2乗)
式の展開と同じ仕組みです。
これを使えば、19×19も、100+180+81=361と出せます。
その内訳は、10×10、2×9×10、9×9なので、一つ一つのかけ算を見るとそれほど難しくはない気がします。むしろ、足し算部分の「100+180+81」の方を難しく思う人が多いのではないでしょうか。
なお、これを(20-1)×(20-1)と考えて、
400-40+1=361
とする方法もあります。
12の段
次に12の段を図にしてみました。
ここでも何らかの法則性が見つかるでしょうか。
12×11だと、100(水色)と20(黄)と10(白)と2(桃色)、
12×12だと、100と20と20と4、
12×13だと、100と20と30と6、
12×14だと、100と20と40と8、
12×15だと、100と20と50と10、
となります。ここから、12の段は
100と20の合計120(かけられる数の10倍)と、
かける数の一の位の10倍、
かけられる数とかける数の一の位同士をかけた数
で出せることがわかります。
こう書くと何だか仰々しい感じですが、
12×1?と考えれば、120に10と2のそれぞれを?倍した数を足すことと同じ。
120+10×?+2×?
こう考えると、かけ算部分は意外と出やすいと思います。
むしろ、かけ算の答えを全部足す方が大変という感じではないでしょうか。
なお、12×15に限って言えば、以前記事にした
ように、12×15→6×2×15→6×(2×15)→6×30→六三18で180と出す方が簡単だとは思います。これは、計算の仕方の工夫になるでしょう。
暗算のイメージ
暗記している計算
私のイメージは、「暗算は記憶を基にした計算」です。計算に使われる「記憶」は、ほとんどが「暗記している計算」と「暗記している仕組み」だと思います。
おそらく、「暗記している計算」はかけ算九九を憶えている人であれば、それほど大きな差は無いと思います。かけ算九九を憶えている人なら、繰り上がりのある足し算も覚えていたでしょう。小学1年の時に、一桁同士の足し算カードにある○+□の式を見て、計算するというより、式を見ただけで答えを出せていた人も多いと思います。0+0から9+9まで式と答えは100あります。
8+6を見て、すぐ答えが出る人(暗算)と、8に6の内の2を先に足して10、6の残りが4だから合わせて14と計算する人(さくらんぼ算)ではどちらが多いでしょうか。調査したものを見たことはありませんが、暗記していた答えを出す人が多いと思います。
速さだけを考えれば、さくらんぼ算を書くより、暗記している答えを書く方が圧倒的に速いです。それでも、さくらんぼ算が書けることにも意味があると思います。
※ 8+6のさくらんぼ算では、8を4と4に分け、4に6を足して10、そこに残りの4を足して14とする方法もあります。
暗記している仕組み
14-8の計算ではどうでしょう。これもすぐ暗記している計算から6と答える人が多いでしょう。さくらんぼ算だと14を10と4に分け、まず10-8=2を計算し、その答え2と残っている4を足して6とするところです。
ここでも、暗記した計算の方が圧倒的に速いです。でも、暗記していない計算が出たときに暗記している仕組みをすぐ引き出せるかどうかで、速さが変わりそうです。
例えば、64-8の場合。
64を50と14に分けられることに気づけば、
50+(14-8)=56
と出しやすいと思います。
でも、筆算の順にならって、
4から8は引けないので、十の位から1繰り下げて、十の位は5。一の位は14-8なので6。十の位の5と合わせて56。
とすると手間がかかる感じがします。(私だけかも)
一方で、1525-678のようになってくると、数を分解するより、筆算を書いた方が速い気がします。(私だけかも)さらに、数の大きい計算になってくると、無理に暗算を試みるより、計算機(電卓)を出してきた方が速いでしょう。
暗記した計算、暗記した仕組みにこだわる必要はなく、手早く計算できる手段を使うので良いと思います。
※ 14-8のさくらんぼ算にも、8を4と4に分け、4に6を足して10、そこに残りの4を足して14とする方法があります。
計算機を使う
計算機(電卓)が世に出始めた1970年代、とりわけ
「とかくこの世は計算さ 数と数との絡みあい…答え一発 カシオミニ。」
のCMが世に与えた衝撃は大きく、計算機は瞬く間に広がった印象があります。でも、一方で「計算機に頼るようになると頭が悪くなる」という論調もあり、学校にもそう話す先生がいました。計算機が手元に無ければ計算ができないのは問題だ、とも。
あのCMからももう50年。
今や、ケータイが手元にない人の方が少ない気がします。ケータイも計算アプリがあって当たり前という感じ。アプリが無くても、ネットで「1563×794」等と検索すれば答えが表示される時代になりました。むしろ、計算機が手元にあっても、計算することなく買い物をする時代になってきました。ネットショッピングや、カード支払い、スマホ決裁では、表示された金額に従って支払いを済ませています。
スーパーやコンビニでも、バーコードを読み取って計算するのが普通になりました。
便利です。
ただ、ちょっとした注意に欠けるとこんなこともあります。
見た目の量の割に安いなと思って購入したのですが、支払いを済ませた後、袋に詰めていて気づきました。間違いがわかるでしょうか?
どんなにしっかり暗記した計算でも、
どんなに正確に計算を書いても、
どんなに高度な技術を駆使しても、
思わぬミスは常に隣り合わせ。
今週のお題「かける」