高校時代(1980年代前半)、ピザも、スパゲティーも軽食扱いでした。本来あるべき食事とは別の、すきっ腹を満たす食べ物といった感じ。喫茶店のメニューでも、たいてい「ミックスピザ」しかなかったように記憶しています。
先輩と行ったいつもとは別の喫茶店。多分、そこで初めて食べたと思います。写真のとろけるチーズが魅力的でとても気になったのでした。
出されたピザは、チーズの上にコーン、ピーマン、ベーコンがあり彩も華やか。マッシュルームもあったと思います。切り取り線のようなのに沿って、フォークで一切れ取り外します。その熱々の端っこをつまんで持ち上げます。
が。予想以上にチーズが伸びました。お皿まで長~く、びろ~~~ん。
人目をやたらと気にする年代です。下手な食べ方で注目を浴びるのを避けたくて、急いで伸びたチーズをフォークで絡めとり、ピザもなるだけ小さく折りたたみ、一口でぱくん。
無事やり過ごしたと思っていたところが、口の中が熱い熱い!何しろトロットロのチーズです。熱くてそのまま飲み込むことも、吐き出すこともできません。慌ててグラスの氷水を押し込みます。
猫舌なのに、熱々なのがとても美味しそうに見えてしまい、すぐ食べたがる自分の習性。これが原因で何度痛い目にあったでしょうか。でも、未だにやってしまいます。
口内の粘膜が火傷したなと思い、後でベロンとただれてくることを覚悟しました。でも、その時はまだ、念入りにふーふーしながら、美味しいと思いながら、食べることができていました。既に人目を気にする神経はマヒしてしまい、笑う人がいてもいい、初めて食べる物なんだから上手く食べれなくても当たり前だと開き直ったのです。
と、そこへ店員さんがやってきて、
「タバスコも置いておきますね。」
と、テーブルに置いていきました。
「タバスコ?」
初めて見ました。小さくて細長いビンに入れられている赤い液体。
緑の文字のラベルがそれに映えて美しく、何か高級な感じ。
「高級のケチャップを、酢で溶いた貴重品。使い過ぎるなよ。」
先輩はそんな説明をしてくれたはずです。
後に、そんなことは言っていないと否定されましたが、とにかく魔法のように美味しくなる調味料というイメージができあがりました。
蓋を開けると小さな穴。なるほど、貴重だから少しずつ使うよう工夫されているのだと納得しました。でも、初めてのピザ、初めてのタバスコ。次食べるときはいつになるやらと思い、多めに使ってやろうと考えました。
タバスコのしずくは、チーズの上で赤い斑点となって、美しく見えました。ポト、ポト、ポト、ポト、ポト・・・。一切れのピザが鮮やかになっていきます。ツンと酢の香りが立ちます。
これは美味しそう。
でもそれは間違った先入観のせいでした。
一口食べて少しの間をおいて、ひぃ!
痛い!とにかく痛みが口を支配します。
火傷してただれているだろう粘膜に、突き刺さるような痛み。
これは、黒ゴマシュガークロワッサンの逆襲か?!
またまた慌てて、水を押し込みました。
先輩は笑うのを必死でこらえている風。
「使い過ぎるなよって言っただろ。」
みたいなことを言います。それなら、高級だからではなく、痛いからと言って欲しかったと反論しても、後の祭り。
それでも、残すのは気が引けて、苦労しながら食べました。
タバスコをピザ全体にかけていなかったのが不幸中の幸いでした。
ただ、冷えてしまったピザは美味しさが半減するというのも知りましたから、かなり長い時間をかけて食べたのだと思われます。
(喫茶店で数時間過ごすのはよくあることでした。)
それからしばらくの間、熱々ピザとタバスコは避けていました。
再び食べ始めたのは、大学進学後に美味しいピザトーストに出会ってから。
もちろん、タバスコも使いました。
今では、ピザのバリエーションもかなり豊富になりました。働き出してから、デリバリーのピザにはまり、週2、3回夕食に注文していたことも。それが原因で、体重もかなり増えてしまい、痩せていた私が中年太りを気にし始めるほどになりました。
食べ過ぎと、調味料の使い過ぎには、ご注意を。
今週のお題「ピザ」