tn198403s 高校時代blog

「人生に無意味な時間は無い。ただ、その時間の意味を感じることなく生きているだけである。」この言葉を確かめてみようと、徒然なるまま、私の高校時代(1984.03卒業)の意味を振り返り綴るブログです。

近況4.自宅の緩和ケア「でも」できたこと

前回の記事で「近況3. 自宅での緩和ケア「だから」できたこと 」を書きました。今回は自宅での緩和ケア「でも」できたことを書いておきます。

本音を言えば、自宅で最期を迎えたいとするツレ父とツレの願いはかなり難しいと思っていました。介護が可能な住居、日常に介護ができる人、自宅でも必要な医療が受けられる体制等々、それらが整わなければ無理に思えました。

それが難しいからこそ、日本で半数ほどの人が自宅での最期を望む一方で、8割以上の人が病院で最期を迎えているのだと思います。

 

検討のきっかけ

希望が見えたのは、ツレ父に軽い脳梗塞が起きた時に訪れた病院でした。案内に「訪問看護」との字を見つけました。もしかしたら、この病院の繋がりで何とかなるかも知れないと思いました。

ツレが詳しく聞いたところ、自宅での治療を希望するのであれば、訪問医師を紹介できるし、訪問看護も可能で、どうしても家では無理となった場合には入院もできること、詳しくは病院にいるソーシャルワーカーさんと相談して決められること等を知りました。こちらの不安を丸ごと受け止めてもらえた感じがして、とても心強かったです。

 

それで、しばらく治療とリハビリで入院した後、自宅に戻ることに賛成できました。それは、ソーシャルワーカーさんとケアマネージャーさんの細かく行き届いた配慮があったからこそ。大きな不安に悩まずにいられたのは幸いでした。

 

 

日中に看る人の確保

一番の問題は、日常的にずっと傍で介護できる人の確保でした。思うように身体が動かないツレ父が家の中を移動中に転倒でもしたら大変です。不意に立ち上がろうとすることもあったので、誰かがずっと傍にいないと心配が尽きません。

ツレには仕事があり、介護休暇を取得できるまで日中に看ることができません。運よく?早期退職している私とツレの伯母さんとが交代しながら看ることで、最難関はクリアできました。

でも、例えば短時間の買い物に行くにも、ツレ父を一人にするのに不安があり、1日のある時間にはヘルパーさんにも入ってもらえるよう手配しました。

 

自宅でも受けられる医療サポート

熱や痛みが出た場合の対応は素人には無理です。でも、1日何回か訪問してくれる看護師さんと、必要な場合には訪問医師さんの診察も受けられることを知りました。急変した場合には、24時間いつでも電話で連絡すれば誰かが来てくれるそうです。(もっとも、担当者が他の人を診ていてすぐに来れないこともあるとのこと)ツレ父の自宅が、訪問看護師さんの事務所に近いことも心強かったです。薬局ともつながりがあって、必要な薬は届けてもらえました。買いに出かけなくても良いというのは、助かりました。

 

尿が出なくなった時、バルーン(尿を貯める袋)とカテーテルをつければ、自宅にいることも、出かけることも可能です。便が出せなくなった時も看護師さんが部屋で対応してくれました。食事や水分の摂取が難しくなれば点滴を打つことも可能で、打つ際、終える際には訪問看護師さんが来てくれました。血中酸素が不足してきた時には、部屋に置くタイプと外出用のポータブル、二つの酸素吸入器を借りることができました。ツレ父の寝て過ごす時間が多くなってきた時、リハビリとしてマッサージをしてもらえました。痰と咳が続いて辛さが増した時には、吸引器を部屋に置き、訪問看護の際に使えるようにもなりました。

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酸素吸入器とスタンド手すり



そうした医療行為の他にも、ケアマネさんが様子をうかがいに来てくれたのも嬉しかったです。それは、介護する者、介護される者にとって、孤立していないという応援メッセージになると同時に、自宅にこもりがちな中、人と会う刺激、会話の機会確保にもなりました。

 

 

家の中の環境

ツレ父の自宅は古いマンションの1階で、バリアフリーには程遠い造りです。大雨の際に冠水する可能性がある地域で、水に浸からないよう1階でも数段の階段がありました。エレベーターはありません。

玄関の段差が10cm程と低かったのと、トイレが洋式だったのは助かりました。

玄関には、靴の着脱がしやすいよう椅子を置くことに。また、天井と床の間に入れる柱をレンタルして、手すりとして使えるようにしました。部屋にはベッド横や食卓付近にスタンド式の手すりを2台置きました。

洋式トイレには、レンタルの手すりや肘掛を設置。最初は、格好悪いと言っていたツレ父ですが、座ったり立ったりにとても便利だったとのことです。

身体の衰弱に合わせて家の中にレンタルの車椅子も用意しました。歩くのが困難になった時、トイレや歯磨き、お出かけの際、役立ちました。

ベッドで半身を起こしにくくなってからは、介護用のベッドを借りました。病院のベッドのように、上半身を起こすことも、ベッドの高さの上下を変えることも可能。寝返りが難しくなった時、ツレ父の身体の向きを変えるのに、ベッドの高さを変えられることがとても便利だったのに驚きました。介護用ベッドにする前、軽いぎっくり腰になって大変だったので、もっと早くから借りていればよかったと思いました。

 

訪問入浴

ツレ父の家の浴槽は、介護しながら入ってもらうには狭い上に深くて、とても無理でした。自宅での入浴はあきらめ、清拭(せいしき:体を温かく濡れたタオルで拭く)するのが精一杯だと思っていました。でも、寝返りが難しくなってから背中の部分に熱がこもり、汗も多くなって拭くだけでは追いつきません。

ケアマネさんとの相談で訪問入浴のサービスを知り、受けることにしました。

 
仰向けに寝た状態で浸かれる浅くて広い浴槽を部屋で組み立てます。水道水を車のボイラーを通して、38℃程度のお湯にして流し込みます。その準備の間に、説明やツレ父の脱衣を終え、お湯が溜まり終わります。お湯に浸かる際は、身体が沈みこまないようシートにのせて、ゆっくり少しずつなのですが、その間に別の人が頭を洗います。頭が洗い終わったころには全身がお湯に浸かり温まっていて、今度はツレ父の左右に分かれた人が連携プレーで、身体を支える役、洗う役が入れ替わり、続いて身体を拭く役、抱きかかえてベッドに戻す役とこなしていきます。

その間、頭を洗っていた人は、浴槽を洗い始めていました。ツレ父の身体をきれいに拭き終わった頃、溜まっていたお湯は全部洗い流され、着替えが済んだ頃には、浴槽の分解が終わっていました。

今後の説明をしてもらっている内に、部屋には浴槽もホースも、部屋が濡れるのを防ぐシートも消え、元通り。

 

一体どれだけの回数をこなせば、このスムーズな流れになるのでしょう?入浴は体も心もリラックスしてくれますが、長くても短くても、身体の負担になります。きっとその辺りも計算し尽くした上で時間を設定し、一日何軒も回ることを可能にしているのだと思いました。まるで、すべてが演劇であるかのようで、全てのスタッフの流れに無駄がありません。

 

何より、入浴する前に微熱があり、喋るのも大変になっていたツレ父が、「気持ちが良い」と伝え、スタッフの手を握ってなかなか放そうとしなかったことが印象に残りました。余程、入浴できたことが嬉しかったのでしょう。

 

まずは知ることから

こうしたサービスの存在の多くは、自宅緩和ケアを始めてから知ったことです。ここに書き切れていないこともあります。日本では、まだ自宅で緩和ケアをする人が圧倒的に少ないため、そうした情報が乏しいのかも知れません。

そんな中、ケアマネさん、ソーシャルワーカーさん、訪問看護師さん、訪問医師さんは情報の宝庫でした。何の情報もないままいろいろ聞くのは難しいですが、シンプルに困っていること、気になっていることを相談している内、そんな方法があるのかと驚くことも多々ありました。

 

自宅緩和ケアを行う際、やはり一番の課題は日中に看る人の確保のように思います。それがないと、一日の緩和ケアのスケジュールも成り立たちません。

でも、自宅でどんな緩和ケアが可能かを知ることで、無理だと思っていたことも検討課題になり得ます。家で看る自信が無い人にとって、サービスについての情報があれば、自宅でのケアに踏み出すのにハードルが低くなると思います。

 

「緩和ケア」のイメージが人によってさまざまなことも、気になりました。残念ながら、死ぬのを黙って待つ期間とか、医療から見捨てられた患者といったイメージの人もいるようです。そんなイメージが、何とか病院に居させたいという考えに繋がっている気もします。

 

自分を振り返って、そんな緩和ケアのイメージのままでは、ツレからの願いに応えられなかったと思います。

自宅での緩和ケアがベストな選択とは言えません。でも、選択肢の一つに考えられることは、今後の終末医療を展望するのにも大事なことだと思います。

 

まずは知ることから。

そんな思いで今回の記事を書きました。

思いの外、長い記事になりましたが、少しでも何かの参考になれば幸いです。

 

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「近況」カテゴリーがそのまま、緩和ケアの話だけになってしまうのもどうかと思い、新たに「緩和ケア」カテゴリーを作っています。

 

これまでの「緩和ケア」カテゴリーの記事

近況1.更新が滞っていることについて

近況2.病院での緩和ケアと自宅での緩和ケア

近況3. 自宅での緩和ケア「だから」できたこと

 

カテゴリーの整理の必要も感じていますが、思案中です。

 

(続きの記事)