tn90.彼岸花と線香の記憶
曼殊沙華は、彼岸に咲くことから彼岸花と呼ばれます。他にもいろんな呼び名があるようです。
小さかった頃の記憶です。
小学校入学前の彼岸に、父の実家へ墓参りに行きました。父は実家に上がるとすぐ、仏壇に線香をあげました。私は緑色の線香の先についた赤い火が気になって、じっと見ていました。線香は煙を立てながら、ゆっくりと短くなっていきますが、赤い火はついたままです。仏壇にはいろんな物が置かれていて、その内、何かに燃え移るんじゃないかと思われました。でも、幸いなことに燃え移ることはありませんでした。
父方の祖母は、よく手作りの牡丹餅をふるまってくれました。とても美味しくて、夕飯が食べられなくなるという母の心配をよそに、二個食べたと思います。
そうこうする内、みんなで墓参りに出かけます。お墓近くの田んぼのあぜ道には、彼岸花がたくさん咲いていました。まっすぐ伸びる緑の茎の上に大きな真っ赤な花が乗った姿は異様にも思えました。あの花は何?と聞くと、彼岸花の名前と、毒があるので触ってはいけないこと、オニユリ、毒花とも呼ばれているなどを知りました。
私は、彼岸花を見て線香を連想しました。そして、線香を見て彼岸花を見るまでに食べた祖母の牡丹餅までがセットになって記憶されています。今なお、彼岸花を見ると思い出すのです。
線香と牡丹餅セットで彼岸花
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