父の知人にはCPAP(シーパップ:無呼吸症候群の治療に使う医療器具)が嫌になって早々にやめた人が2人いるそうです。そのせいか、父も寝づらかったら止めても大丈夫だろうと安易に思っていた気がします。
CPAPを使い始めた頃
当初、どうしても眠れなったら、その夜は止めるのも仕方ないと話していました。
装着すれば効果が出るというのであれば、強引に装着してもらうところでしょうが、装着したまま睡眠ができて初めて効果が出る器具です。眠れなければ苦痛を強いるだけなので、その後はCPAPを外し、口止めテープだけ貼って 寝ることにしました。 (※ テープを貼って寝たのは数日後からです。2021.04.14修正)
と書いた通りです。
眠りづらい理由
使い始めた頃、CPAPをしていると口が大きく開いて空気が漏れてしまい、器械がより圧力のある空気を送ろうと大きな音が出ることも多かったです。それで父は、CPAPの圧力のせいで口が開いてしまい、眠れないのだと思い込んでいるようでした。
父の眠り方も問題があるからCPAPの動きが強くなると話しても、信じてもらえず、CPAPは諦めた方が良いとまで言い出す始末でした。
そこで
鼻マスクを装着したままでCPAPを止めてみました。数分の間は口を閉じていられるのですが、予想通り、器具が停止していても徐々に口が開いてしまうのです。
(中略)
父は、仰向けになっているだけで自然と口が開くことに多少のショックを受けたようですが、口が開くのはCPAPが原因ではないと納得できたようです。そして、その日から口止めテープをしてCPAPを使うようにしました。
その後、少しずつ眠れることも出てきました。
眠れても、本音はCPAPを外したい
最近ではようやく、一晩中CPAPを装着して眠れる日も出てきました。夜中にトイレに起きることは毎日あるのですが、かつて「絶対に眠れない」と言っていた父が「少しは眠れることもある」を経て「ぐっすり眠れることもある」と変化してきたのです。
それなのに、ぐっすり眠れることが出てきたことで、もうCPAPを使わなくてもいいんじゃないかとでも言いたげに、「いつまで使えばいいのだ?」と聞いてくることがありました。
父の知人でCPAPをやめた人がいると知ったことも影響していたのでしょう。CPAPを着けて眠ることができても、やっぱり着けずに眠たいという本音があったと思います。
父、無呼吸の様子を知る
実は、CPAPを使い始めて数日後から、毎晩睡眠中の音を録音するようにしていました。これが父の考えを改めるのに役立ちました。
上の図1は無呼吸が立て続けに起きた様子を、フリーソフト Audacity で視覚化したものです。(リンク先は窓の杜)
4:08:50(録音開始から4時間8分50秒の意味)~ 4:09:37 の約47秒、途中息が吐き出せずに喘ぐ音が入りながらの無呼吸があり、その後に大きく息を吐き出しました。
20秒程息を続けてから、4:09:57 ~ 4:10:33 の約36秒、喘ぎながらの無呼吸に。
さらに、小さい息を2回したすぐ後、4:10:36 ~ 4:11:56 は、とても静かな1分20秒の無呼吸になりました。
録音していたいびきや無呼吸の様子を聞いたとき、父の表情が変わりました。いびきが今にも死にそうな程苦しい呻き声に聞こえる上に、不意にそれが止まって息が出せない喘ぎと静寂を繰り返した後、大きなため息のような唸り声のような息を吐くのです。
「生死を彷徨っているみたいだ。」
と父は言い、ようやくCPAPを外して寝るのは怖いと思い始めたようでした。軽い重症というイメージが重い重症に変わったようです。
一方で、CPAPを着けて眠っている父の呼吸が落ち着いている様子を聞いて、
「確かに、CPAPを着けている方が気持ちよく眠れているようだ。」
と納得できたようです。視覚化した画面でも違いは一目瞭然。CPAPを着けると眠れないことが多いというのが思い込みだとも理解できたようです。
図2では、無呼吸での静寂時よりやや太い(静かではあるが器械音と呼吸音が続いている)線がほぼ同じ太さで真っすぐ示されています。よく見れば、小さな点がポツポツとあり、器械と呼吸の音に小さな波があるのもわかります。
録音データを聞かせた効果はてきめんでした。
これまで、検査結果の数値やグラフで説明してもなかなか分かってもらえなかったのですが、これ以降CPAPの装着を面倒だと言うことはあっても、着けたくないとは言わなくなりました。そして、だんだんと慣れていく内に、父もCPAPをしてぐっすり眠れることがあると実感できるようになっていきました。
CPAP稼働中の音と父の呼吸音
傍らで父の様子を見たり、録音データを聞いたりしている内、CPAPの音と父の呼吸音に幾つかパターンがあると気づきました。
父が眠れていない状態
- 閉じた口から空気がぷっぷと漏れる音(P音と命名)がするのと、口をしっかり閉じて音を止めるのとが繰り返される。恐らく、音が気になって眠れず、自分で強く口を閉じようとしている。
- 口が閉まらず、常に幾らかの空気が漏れ続けるシューッという音(S音と命名)と、口をしっかり閉じて音を止めるのとが繰り返される。
- 口がある程度開いた上、喉や頬がぶるぶるぶるぶる、と震える音(B音と命名)がするのと、口を閉じて音を止めるのとが繰り返される。かなり眠気が来ているようだが、まだ口を閉じようという気持ちが働いていると思われる。
父が眠っている状態
- S音が長く続くものの、やがて、機械音と呼吸音のリズムが合って落ち着いた音に変わる。
- B音がしているが、意に介さず口は開いたままで、やがてS音に変わっていく。
- 鼻から息を吸い、鼻から出すことが静かにできていて、器械音も呼吸音もほとんど聞こえない状態(図2のような状態)
仮説として、口を閉じる動作が出ている間は眠れず、口の開け閉めが無ければ眠りに入りやすいと言えそうです。また、寝入りやすい口の開き具合があるのかも知れません。
今のところ、私がまだ起きている時間帯(2:00~3:00頃まで)であれば、父のトイレの後も寝入りを確認しています。眠れないときは1時間以上かかっても眠れません。そんなときは一度起きあがって、念のためトイレと給水をするなどしてから床に就くと、程なく眠れることもあります。
今は、口を閉じることより、鼻から息を出すことを心掛けるように言っています。鼻からしっかり息を出せれば、口から出る空気の音も器械の音も自然に小さくなり、眠れやすくなるようです。
父、CPAPを外して寝てしまう
ところがある夜、いつものように父の様子を伺いに部屋を覗くと、いつになく静かなのです。静かな機械音もありません。CPAPの画面には動作中の羽マークではなく、停止状態のロゴが光っていました。
急いで父の傍によると、鼻マスクが外されています。これは完全な無呼吸状態だと思い、すぐ父を起こしました。父はすぐ目覚めましたが、事態がよくわかっていないようで、「何故マスクをしていないのだ?」「お前が外してくれたのか?」と言うのです。いつ外したのか憶えていないようでした。
父がいつの間にかCPAPを停止させ、鼻マスクも外したようだと理解したとき、「そのまま、息が止まって死んでいたかもしれないな。」と落ち込んでいました。
多分、トイレに行こうと起きるつもりでCPAPを止め、鼻マスクも外したものの、ちょっと横になったときに再び寝入ってしまったのだろうと考えました。
CPAPを外した様子を録音データで聞く
翌日、録音データを丁寧に聞いてみました。
B音が続く中で、布団の動く音がします。器械音が止まり、鼻マスクのマジックテープを外す音。大きな息をして、いったん横になったようです。
そこから、ずっと静寂が始まりました。CPAPと呼吸音が静かになったときよりもっと静かです。静寂は私が父の部屋に入るまで約30分続いています。
私はてっきり無呼吸だと思っていましたが、無呼吸が30分も続くはずがなく、静かに鼻呼吸をしていたのだとしか考えられません。私は嬉しいやら怖いやらでとても複雑な気持ちです。
父がこんなに静かに眠るなんて、まずなかったのです。もしかしたら、無呼吸が治るかも知れないと期待が湧きました。しかし、これまでCPAPを外して寝た時、隣の部屋にいる私にいびきとその合間の無呼吸に気づくことができていました。静かに眠れるのはいいのですが、隣の部屋に居ては無呼吸とCPAP稼働中の区別がつかない、CPAPを外しているかどうもかわからないというのは、何とも厄介に思えます。
とりあえず、私が寝るまでに父の様子を見に行く回数を少し多くすることにしました。
CPAP使用一ヵ月を超えて思うこと
父がCPAPを使い始めて一ヵ月を超えました。ぐっすり眠れることが増えてきたと父も私も実感しています。それでも、なかなか寝付けない日が3日に1回くらいのペースであります。もっとも、トイレに毎晩複数回行くため1日に3回くらい寝入りを確認していますから、寝付き全体の回数で言うと、寝づらい時は今のところ10%強くらいでしょうか。使い始めから言うと、ずいぶん眠れやすくなったと言えそうです。
ただ、父一人で寝るのにはまだ不安が多いです。口止めテープを忘れて布団に入ることもあります。鼻マスクのフックが外れているとなかなか自分でマスクが着けられないことがあります。口から空気が出る音が気になって1時間経っても眠れないままのこともあります。さらに、半ば無意識にCPAPを外したまま、眠ってしまうこともあります。
誰も見ていなければ、CPAPをきちん起動できなくても、もういいや、と諦めて寝てしまうことがありそうに思えてしまうのです。
一方、昼間は腰が痛いと言うのを除けば、ほぼ問題なく動けています。先日、一緒に散歩した時は、ハイテンションで 1万歩を超えて歩きました。後で足が痛くなることもありませんでした。食欲旺盛で、食べる量も少し増えた感じです。三食を食べさせえすれば、何をどれくらい食べたかあまり気にしないタイプ(少しは気にして欲しいのですが)なので、本人は同じ量を食べていると思っているようです。
掃除や洗濯、ご飯炊き、ゴミ出し等、変なこだわりを持って一人でやっています。めまいがする、ふらつくという訴えも、CPAPを使い始めてから2回くらいしか無く、ずいぶん減りました。もしかしたら、無呼吸症候群がめまいやふらつきの原因だったと可能性もありそうです。
まだまだ安心・油断はできませんが、思った以上に事態は改善されているようです。
以上、父のおうち時間、CPAPを着けて寝ている様子2021でした。
(※ 関連する内容は少なめです。)
今週のお題「おうち時間2021」