近況16.痩せ型80歳の父、CPAPに悪戦苦闘する 教えるは教わる(2)
前回、CPAP(シーパップ:無呼吸症候群の治療に使う医療器具)使用初日のことを書きましたが、父の場合、CPAPに慣れるのにかなり苦労しています。
説明の時、慣れるのが早い人はその日から、遅い人は一ヵ月超えることもあると聞かされていましたが、すぐ使えるようになるだろうと楽観的に考えていた父と、一ヵ月かかるかもしれないと悲観的に考えていた私でした。
ここでは、CPAPで口止めテープを使うようになった経緯を記します。
(前回の記事では初日から口止めテープを使っている表現になっていたので訂正しています。)
「絶対に眠れない」への対処
父はCPAP(シーパップ:無呼吸症候群の治療に使う量器具)をつけるようになっても、なかなか慣れることができませんでした。夜中のトイレや喉の渇き、痛みなどで2度3度と起きる日が続きます。また、その度に不平不満を聞かされます。
つけたままでは「絶対に眠れない」と言い張るときもありました。そんな時は「慣れるまでに一ヵ月かかった人もいるから、少しずつ慣れるようにしてみて」となだめたり、「機械に慣れると朝までぐっすり眠れる人も多いらしいよ」と期待を持たせたりしました。私からは反論しませんでした。この時の父の「絶対」は、「未来永劫」の意味ではなく、「今はまだ」という限定的なものに思えたからです。もっとも私の父への口癖で「そんな簡単に絶対と言わない方が良いよ。」くらいは言ったかもしれません。
- 「絶対に眠れない」への対処
- 起きたら一度、鼻マスクを外す
- 本当に眠れていないのか確かめる
- 私のCPAP仮体験
- 口を閉じた方が眠りやすい?
- CPAPが眠りを邪魔していると感じていた父
- CPAPの圧力で口が開くわけではない
起きたら一度、鼻マスクを外す
また、夜中に起きた時は、鼻マスクを外さないと居られないようでした。鼻マスクからホースを外せば移動は自由ですが、口をゆすぐ、給水するにはどうにも不便なようです。喉が渇くのに給水をしないのは眠りづらいだけでなく危険もありそうです。マスク装着はやや手間でしたが、その分、装着に慣れるのも早くなります。そこは父の判断に任せました。
そのおかげか、不平不満を言いながらも、1回起きた後はもう一度つけて寝てくれました。一回目に起きるのは23:00頃。医者から1日1時間以上はつけるようにと言われた条件はクリアできているのですが、父自身、使い慣れたいという思いもあったのでしょう。ただ、2回目に起きた後は、今夜はここまでと判断し、CPAPを外して寝ることが多かったです。
本当に眠れていないのか確かめる
使い始めてすぐの頃は、父が横になりCPAPを動かして部屋の電気を消すのを見届けてから、部屋を出ていましたが、数日経っても慣れる様子はありません。本人は機械が動いている間、ずっと眠れないままだと言います。そこで、ある日から、実際に眠っていないのかどうか、寝ている父の傍らで様子を確かめることにしました。
すると、幾つかのことがわかりました。
- 明らかに眠っているを思われるときがある。
- CPAPの機械音は、呼吸の状態に合わせて結構変化する。
- 眠れていないときは、父の口が開いたり閉じたりする。
- 口が開く(空気が漏れる)とかなり大きな機械音が出る。
- 父が落ち着いた呼吸で眠っていると機械音はかなり静か。
時間の長さはともかく、確実に眠れている時があるのを確信できたのは大きな収穫でした。
私のCPAP仮体験
本来、CPAPは患者の状態に合わせて処方されているので、他の人が使うことは禁止されています。でも、機械音が、呼吸の状態に合わせてどんな変化をするかを知るヒントになると思い、横になって、ホースを手の平で鼻を覆うようにして、機械を動かしてみました。
最初は、思いの外、強い圧力の空気が鼻に入ってきます、いえ、押し込まれてるという感じかも。この状態で鼻から息を出すのは確かに容易ではないと思えました。でも、しばらくすると落ち着くので慣れることが絶対に無理という程ではない気がします。窓を開けてゆっくめに走る車の助手席で眠るイメージが湧きました。
試しに、少し口を開けてみると、鼻の奥から口を通って圧力のある空気が抜けていきます。しかも圧力はかなり強くなるようです。口から空気が抜ける分、喉をふさぐ舌を押し上げる力が不足するので、機械がさらに強い空気を送るのだろうと思いました。そして、その影響で口や喉が急速に乾き、唾を飲み込もうとしたり、咽たり、痛みを感じるのだろうと考えました。
口を閉じていれば、喉の渇きや痛みはかなり軽減されそうです。ネットで得た情報に納得できました。
口を閉じた方が眠りやすい?
私としては「口を閉じた方が眠りやすい」ので、それを習慣づけられたら眠る時間も増えて、問題は改善されると思っていました。でも、それが改善へ遠回りする要因になった気がします。
CPAP仮体験をしてから、数日「鼻から息を出すようにして、なるだけ口を閉じるように」と父に話していましたが、父の意識は「できるだけ口を閉じる」だけに向いてしまったようです。
部屋を暗くして父の眠るのを傍らで見ていると、最初の内はぴたりと口を閉じています。そして、眠気が来ると口が開いてしまって空気が漏れ始めます。そうすると父は、自分で口を閉じているようでした。でも、それだとせっかく訪れた眠気を自ら遠ざけるようなもので、眠るのは余計に難しくなるだろうと思いました。再び「教えるは教わる」です。伝え方がまずかったと教わりました。
CPAPが眠りを邪魔していると感じていた父
そこで日中、父にお試しでCPAPを装着して寝てもらいました。やはり始めは口を閉じています。でも、数分すると口が開いてきて空気が漏れ始め、それに気づいて口を閉じます。
「口を閉じるのをそんなに気にしなくてもいい」と言うと、「口に空気が溜まってしまうから、口が開いてしまう」との返事。なるほど。父はCPAPの圧力のせいで口が開いてしまうと考えているようでした。これでは、CPAPが眠りを邪魔しているように思えるのも仕方ないように思えました。
CPAPの圧力で口が開くわけではない
今度は、鼻マスクを装着したままでCPAPを止めてみました。数分の間は口を閉じていられるのですが、予想通り、器具が停止していても徐々に口が開いてしまうのです。その原因に顎が小さいことと、高齢化と痩せ型による顎の筋力の低下がありそうに思いました。
父は、仰向けになっているだけで自然と口が開くことに多少のショックを受けたようですが、口が開くのはCPAPが原因ではないと納得できたようです。そして、その日から口止めテープをしてCPAPを使うようにしました。
テープの有無による違いは明らかにあるのですが、父の場合、テープをしてもそれなりに隙間ができてしまうので、大きな機械音が出てしまうことも多いです。それでも、この辺りから、少しずつ事態が改善に向い始めました。
今になってみると、検査入院が一度キャンセルになった直ぐに口止めテープをして寝るようにして正解でした。テープに慣れていなけば、CPAPとテープの二つがいきなり始まるので結構ストレスになっただろうと思うのです。
次回は、SPAPを装着して少しずつ眠れるようになったことについて書く予定です。
続く