遊び67.『クイズ100人に聞きました』人気の理由
テレビ番組『クイズ100人に聞きました』をご存知でしょうか。関口宏さんの司会で、1979年から1992年まで続いた人気番組でした。私もよく見ていました。
番組名通り、100人にアンケートしてどんな回答多いのかを予想して答えます。回答者の答えがその中に有りそうに思うと、会場の来場者が「ある!ある!ある!ある!ある~!」と連呼の中、パネルがオープンされるのが定番。もっとも、その答えが無さそうだと声が小さくなるし、時に小さく「ないないない…」とも言ってたような。

クイズのルール
1.出題クイズとパネルの数
とある条件の100人に質問して得た答えを元にクイズを作成します。
例えば、「スポーツジムに来ていた100人に聞きました。答えは7つ。あなたが一番好きなスポーツは何?」といった感じ。100人の答えが多岐に分かれる場合も多いのですが、人数の少ない回答は割愛され、大抵、4~8個程度のパネル(選択肢)に絞られて出題されました。
2.先攻か後攻かを決める
5人編成の2チーム対抗。まず、チーム代表者が台に上がり、クイズに早押しで1対1の対戦。ここではチームの相談は不可。代表者だけが答えます。早押しで答え、1番人数の多い答えなら、そのチームが先攻。1番の答えでなければ、相手代表に回答権が渡り、より順位の高い答えを当てた方が先攻チームになります。
3.勝敗のつけ方
ここからチームでの相談が可能。先攻チームになると、計3回失敗(誤答と時間オーバー)するまで回答を続けられます。その間に選択肢を全部的中できれば先攻チームの勝ち。的中できなければ、後攻チームに回答権が回ります。後攻めチームは1回だけの回答チャンスで、選択肢を的中させれば勝ち。できなければ負け。
勝ったチームは、それまでに両チームで的中させたパネルにある回答者数の合計が点数として得られます。これを5問対戦して総得点の多い方が勝利。
具体的な進行を再現
番組を知らない人はルールがイメージしにらいと思うので、上述の例題を元に進行させてみます。(舞台は1980年代前半。私の高校時代、テレビ視聴の記憶等を念頭に、出題や答え、進行は勝手な想像です。)
英字チームVSカタカナチーム
A、B、C、D、E、の5人がいる英字チームと、ア、イ、ウ、エ、オ、の5人がいるカタカナチームの対戦とします。まずは、番組冒頭で2チームが入場、簡単なあいさつ、自己紹介やルール説明があってスタート。
代表者の対決
1問目の対戦は、それぞれの代表、Aさんとアさん。二人が早押し回答台に向かい合ってスタンバイすると、関口さんから出題されます。
「問題。トレーニングジムに来ていた100人に聞きました。答えは7つ。」
このタイミングで、パネルには1~7の数字が映し出されます。

問題が続きます。
「あなたが一番好きなスポ…」
まで聞いたところで、ボタンを先に押したAさん。「はい、Aさん、どうぞ。」
「ボクシング!」
英字チームの他4人は、それを聞いて微妙な顔。
「どうしてそう思ったの?」と関口さん。
「ジムと聞いて閃きました」とAさん。
「なるほど、あるかも知れないね。どうかな~?」と関口さんが言うと、緊張を高めるBGM、ティリリリリリ~を響かせながら、テレビはパネルを大写しします。会場にいた見学者は、あるとは思いつつ、1位は微妙に思うのか「あるあるあるある~」の声は小さめ。
1枚目パネルオープン!

正解を知らせるピンポンピンポン♪の音。ボクシングは3位で11点。
「あった~。でも、3位だ。ちょっと、考え過ぎちゃったかな~。」と関口さん。
Aさんはしまったという感じでうつむきます。英字チームの4人もうな垂れます。
今度は最後まで「あなたが一番好きなスポーツは何?」と問題文を読み、
「じゃあ、アさん、3位を超えられるかな。答えは決まった?」と聞きます。
アさんは「決めました。自信あります。」と断言した答えは「野球」。
「さあ、どうだろう?」と関口さん。
再び、緊張を高めるBGMを響かせながら、カメラはパネルを大写し。
他のカタカナチームのメンバーも自信ありげ。会場も先程の倍はある大きい声で「ある!ある!ある!ある~!」と連呼。
2枚目パネルオープン!

ピンポンピンポン♪野球は見事1位で21点でした。
先攻はカタカナチーム
カタカナチームはアさんに拍手を送って大喜び。先攻はカタカナチームに決定。
「あ~、やっぱり…。ひっかかったなぁ」とAさん。
「野球も少しは考えたの?」と関口さん。
「はい。でもジムって言ってたからボクシングだと思いました。」
「なるほどねぇ。でも、スポーツジムでなかったら、ボクシングはもっと順位が低かったかも知れない。」
Aさんは英字チームの席に戻って、他のメンバーに頭を下げます。
5枚までパネルオープン
さて、先攻の権利を得たカタカナチームは人気のありそうなスポーツ名を順に答えていきます。イさんは相撲で4位の10点、ウさんのテニスは2位13点。エさんは6位のサッカーで5点。80年代は、サッカーのプロリーグも無く、漫画『キャプテン翼』も連載が始まったばかりで、まだそれほど人気の高いスポーツではなかったのです。とは言え、これで60点。

X(バツ)マーク現る
この辺りから答えの難易度が上がります。オさんのバスケットはハズレでブブーの音。後年、大人気を得る漫画『SLAM DANK』の連載はまだ5年位以上先。『ダッシュ勝平』の連載やアニメを楽しんでいるのは主に子どもで、スポーツジム内での人気はそう高くなかったのでしょう。1回目のミス、Xマークが1つ表示されてしまいました。

パネルからX表示が消えた後、2巡目、アさんの答えは柔道。オリンピックで金メダルを多く獲得する種目ですから、少しは「あるあるあるある~」の声もありつつも、ハズレで2つ目のX表示。誤答できるのはあと一回だけです。
続いて、緊張マックスになったイさんの答えは卓球。かなり微妙に思えたのか、会場も静か。結果は…

3つ目のXマーク表示。残念。回答権は後攻の英字チームに移りました。
後攻、英字チームの回答
関口さんが再びAさんに話しかけます。
「回答権もどってきてよかったね。」
「よかったです~。ハラハラしました。」とAさん。
「残ったパネルは2枚だけど、相談して答えは決まった?自信ある?」
「あります!間違いないです。みんなで相談して一致しました。」
「正解できるといいねぇ。」と言ってから関口さん問題を読み直します。
「スポーツジムに来ていた100人に聞きました。答えは7つ。あなたが一番好きなスポーツは何?」
英字チーム5人は「せ~の。」でタイミングを合わせて「マラソン!」と自信たっぷりに答えます。当時は、瀬古利彦選手や、宗兄弟など人気選手が大活躍中で、テレビでも注目の的でした。「ある!ある!ある!ある~!」と連呼する声も大きいです。
「あぁ~、そうか、マラソンがあったか。」
カタカナチームは負けを覚悟したのか、ため息をついて天井を仰ぎ見ます。
決着
BGMの中、カメラがパネルを大写し。
勝敗を決める回答だからか、判定はややゆっくり目。
そして、ピンポンピンポン♪の音。マラソンは7位の4点。

おぉ~と、どよめき。英字チームのメンバーも胸をなでおろします。おそらく、多くの人がマラソンは5位だと思っていたのでしょう。
「正解!お見事!」と関口さん。
英字チームの勝利、パネルにある点数の合計64点を獲得。
「焦った~」とAさん。「7位とは思わなかった?」と聞かれて「はい。」
「まぁ、聞いた場所や人で答えは変わるから、そういうこともあるでしょう。」
と言いつつ、関口さんは続けます。
「じゃあ、5位は何だかわかる?」
カタカナチームから「水泳?」の声。「うん、水泳もあるんだけど8位3点。へぇ~、質問したジムにはプールもあるそうですよ。それでも8位なんだねぇ。ちなみに、柔道も卓球も同じ8位で3点。惜しかった。」
続いて「競馬?」。「え?競馬ってスポーツ…になるのかな。馬術ならオリンピックの種目だけど。え~、あったあった。これは1名だ。」
「残りの答え気になるね。開けてみましょう。」
最後の答え
5位のパネルオープン。

5位はゴルフで9点。
「ゴルフか~。」と多くの人が溜息。「盲点だったかな。ここにいる人はあまりしない?(多くの人が頷く)そうかぁ~。好きな人は好きですけどね。駅のホームでクラブを振る格好するも人いますから。でも、あれはあぶない。」
「さあ、続いて第2問にいきましょう。」
…、という感じ。
人気の理由
私の勝手な推測ですが、人気があったに理由3つを考えてみました。
1.家族や友人、職場などのチームで参加し、テレビに出演できる
今の時代だと敬遠されがちに思いますが、当時はチームでの参加が功を奏したと思います。日常の仲間と非日常を楽しめること。今と比べて、テレビに出れば格段に注目の的でした。また、ゆっくり時間が流れていて、現代程の多忙さも無く、参加しやすい条件がそろっていたと思います。
2.斬新なクイズ問題
知識を競うクイズ番組なら他にもたくさんありましたし、それはそれで人気でしたが、『クイズ100人に聞きました』の問題は、正解がわかりづらく、意表を突く答えも珍しくありません。アンケートをする相手や場所、時間によって答えが変わるだろうことも斬新でした。考えても当てられない一方、苦し紛れの答えが当たることもあるバランス具合も良かったのでしょう。
3.クイズの演出効果
番組の代名詞のような9枚のパネル。ここにそれまでの正解が映し出されます。参加者、視聴者にとって、それはヒントにもなって次の回答への関心を高めます。上の例なら「野球」「相撲」等は多くの人が思いつくでしょう。人数の多い回答なら自信満々に、人数の少ない回答なら「してやったり」と鼻高々になれます。そして、会場の「あるあるある~」のリアクションは、同じ答えを考えた視聴者にも臨場感たっぷりの応援になります。私を含めて、テレビを前に一緒に連呼した人は多いのではないでしょうか。
視覚的、音響的効果はテレビの腕の見せ所。その影響は大きく、日常生活でもクイズ問題を当てると「正解」ではなく「ピンポ~ン♪」と言う人は多いです。
実は、高校時代、この番組で取り上げて欲しいと思っていたアンケートがありました。
その話は別の機会に回します。
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