谷川俊太郎さんの訃報を昨日知りました。
亡くなったのは11月13日、享年92歳とのことです。
お悔やみ申し上げます。
喪失感が大きいです。このブログでも、何度か谷川俊太郎さんの『マザーグース』(講談社 全4巻)の文庫本について何度か言及しています。他にもたくさんの有名な詩や作品があることも知っていますが、私にとっての一番の記憶は『マザーグース』です。
イラストが和田誠さんでした。本屋さんで見つけて、パラパラとめくっただけで、すぐ購入したと記憶しています。
その中の、「ハンプティーダンプティー」は、私の小学校時代の曖昧な記憶を呼び起こし、高校時代の文化祭で創作劇の案を思いつくきっかけにもなりました。案は没になったのですが、子ども向けの作品の中にも奥深い世界があると知ったことは、大きな収穫になっています。
それまで児童書は、子ども向けにわかりやすい言葉で書かれた物との印象でした。でも、子どもに何を気づいてもらいたいかという視点で読むと、伝えたいことを、言葉の選び方、紡ぎ方、韻を踏んだり、リズムだったりを駆使した、たくさんの工夫に気づかされるのです。
マザーグースはもともとイギリスの口承童謡として、語り?歌い?継がれてきたもの。地域によっては、言葉の違いもあったと聞きます。それらも考慮しながら、親しめる日本語に訳すには、子どもが楽しめる言葉を選ぶ感性も必要だったでしょう。
『マザーグース』には訳だけでなく、元の英文も載っています。それを英語の苦手な高校生でも音読したくなるのです。そうして、谷川俊太郎さんの訳は、英語の直訳だけでは伝わらないことがあることにも気づかせてくれました。平易な言葉や読みやすさやリズム。そこに伝えたいことがしっかり収まっているのです。
「子ども向け」の文章には、そうした思いや技が詰まっていると知りました。
子ども向けの本は、成長する過程で不要な本になるといった偏見は消え、本屋さんや図書館の児童書コーナーにも度々足を向ける高校生が完成したのです。
子どもの視点でも考え、表現できること。
それは私を一つ、大人にしてくれた気がします。
この後『不思議の国のアリス』や『イソップ物語』から始まり、やがて、レオ・レオニさんやエリックカールさん、アーノルド・ローベルさんに、さらに日本の児童文学の読み直しへと広がっていくのでした。
児童書に誘ってくれた谷川俊太郎さん、
ありがとうございました。
安らかにお眠りください。
残り56記事。
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<余談 関連記事のリンク>
関連があるブログ記事のリンクを貼っておきます。
高校時代の文化祭にむけて考えた劇のアイデアの記事。
「ハンプティ・ダンプティ」の詩を初めて知ったとき、思い出した光景があります。そのことを書いた記事
また、谷川俊太郎さんの訳と和田誠さんのイラストで、講談社文庫から出版されていた『マザーグース』(4冊シリーズ)との出会いの経緯に触れた記事はこちら。