予感と予想外
先日、まずいかもと思う程、歯に染みる感じがあって、「これ、後から確実に痛みだすパターンでは?」と、歯医者を訪ねました。まだしばらく帰省を続ける予定なので、自宅に帰るまでに治療がすめばいいな、と考えたのです。
結果、染みる個所とは別の治療というか、予想外の抜歯となりました。
2年前に書いた、初めて親不知(おやしらず)を抜いた1984年の話。
その続編を、このタイミングで書くことになるとは思わなかったです。
あれから38年。今回、最後の親不知を抜くことになりました。
迫る時間の狭間で
高校時代に抜いた親不知は受験に旅発つ前。受験日までに抜糸がすむかどうか気にしながらでした。今回は、11月に入ったすぐ自宅に戻る必要があります。それまでに治療がすむかどうかが気掛かりでした。
歯の検診を兼ねた掃除の後に診察。医師は
「染みる部分には、小さい虫歯があります。ただ、染みる原因がもう一つ奥の親不知にある可能性も大きいですね。」
と言った後、少し間を置いて、
「親不知を抜きましょうか。」
え?!あまりの予想外に、一瞬、言葉を失いました。
染み感があるのは親不知の一つ前の歯。でも、その部分の治療をしても、親不知が影響しているなら染みが治まるかどうかは不明とのこと。話を聞いての推測ですが、親不知の圧迫はずっと以前からあった上に、一つ手前の歯に虫歯ができて染みるようになったらしいです。染みる原因が歯茎の奥にあるなら、歯の表面を治療しても染みるのは消えないだろうと。
「抜かなかった場合、染みる箇所の治療だけで自宅に帰った後に、痛み出すことは十分考えられます。何も無ければ、それが一番いいですけど。」
何だか脅されている気がしてきました。でも、診察前に「後から確実に痛みだすパターンでは?」という予感が的中しただけに、説得力あり過ぎです。
「気にしている箇所より親不知の方が、虫歯がずっと進んでいて、いつ親不知自体が痛み出しても不思議ではないです。鏡で見てください。」
と看護師さんから、手鏡を手渡されて歯の様子を見ることに。ただ、通常では見えない親不知の裏部分です。口内用の鏡に映った歯を手鏡で確認します。すると、え?!と思うほどの穴が親不知にぽかりん。おや?知らずにいました。今まで痛みが無かったことの方が不思議なくらい。
三つの選択肢
諦めがつきました。帰省している間の治療は、三択に絞られました。
- 染みる箇所だけの治療をして様子見。ただし親不知が原因の場合、染みるのは続くし、後に親不知自体、痛み出すと思われます。
- 親不知をまず抜いて、染みる箇所は様子見。抜歯後の痛みはあるが、それで染み感が治まる可能性もあるし、その後に染みる箇所の治療をするのもあり。
- 親不知を抜き、染みる箇所も一気に治療。術後の痛みと術後の治療日程が大変になる可能性もあります。
1は、痛くなる前に処置したい派の私としては、一番嫌なパターン。治療してから痛むのは御免です。3は、治療後が大変になる場合を考えるとかなりの冒険に思われました。2を選択することに決めましたというか、それ以外は無いという感じです。
高校の時は、診察時間が遅かったのもあって抜歯は時間がかかるので翌日となりましたが、今回は即断即決即行動でした。
親不知を抜いた経験
経験上、親不知を抜くのは、ちょっとした覚悟が必要です。
1984年に初めて抜いた親不知は左上。先の記事の通りです。診察に訪れて翌日抜くことになった晩にかなり痛み始めました。恐らく「後で痛み出す予感」はこの時の経験によるもの。
その夜から、痛みはどんどん激しくなった。痛みがさらに増しそうで風呂には入らず、寝付くまでにかなり苦労した。
翌朝、出勤前の父の話では、口を開け、しかめっ面のままで眠っていたらしい。
抜く直前直後は麻酔で気楽になっていましたが、麻酔が切れてからは大変でした。それでも、受験までに抜糸を終えることはできました。
1992年に二本目の抜いた親不知は左下でしたが二回目なので、それほど怖くはなかったです。ただ、下側の親不知を抜くのは大変だと思い知らされました。三本目ほどではなかったですが、看護師さん
1995年(多分)の三本目は右下の親不知。このときが一番大変でした。歯茎の外に出始めていましたが、一度に抜くのは難しいとのことで、歯茎を切断した後に、親不知を二つに切り、一つずつ抜いたと記憶しています。看護師さんに二人掛かりで席に抑えつけられ、ペンチを使ってぎりりぎりりと抜いたように思います。そうして、一つ抜いたときに、ちょっと休憩となったような記憶もあります。抜いた後もしばらく大変でした。痛さで疼くし、血も止まりません。もちろん、どくどくと流れる程ではなく、何かの拍子に、ちょろっちょろっと流れ出る感じ。食事の時はもれなく血の味がトッピングされ、噛むのも大変。抜糸の後も血は止まり切らず、結局10日程は出ていたと思います。
そして誰もいなくなった
それにしても、抜歯の流れのスムーズな事。上の歯なので楽ですよとは言っていましたが、抜歯を決断してから抜き終わり、支払いを済ませて病院を出るまでが30分程。
麻酔?の注射が一番痛かったです。数カ所に、チクリ!チクリ!とは言っても、汗が吹くほどの痛みでもありません。その後「じゃあ、抜きますね」と言われるまでの時間の短さ。診察席から離れて麻酔が効くのを待つ必要もなかったです。
何かで歯をつかまれて、ぎぎぎと骨を通じて音を聞いたような感じがあり、しばらく後に今度はぎりり、ぎりりと引っ張られる感じがありました。
「ああ、これで歯が挟まれて固定されたのだろう。さて、いよいよ本格的な格闘が始まるな。」
と身構えたところで、
「なかなか大変でしたが、無事抜けました、」との声。
へ?
27年の抜歯技術の進化には驚くばかりです。
年齢が進んでから抜く場合は骨までしっかり固定されている分大変ですが、真っすぐに近い状態で生えていたので抜きやすかったとの事。そうして、抜きとった歯を見せてくれました。これには納得です。そういえば、右下の親不知は形もかなり歪だったのを思い出しました。抜いた歯を見た時、2片を合わせれば、他の歯の2個分くらいあるように思ったものです。
若い内に抜くのは、免疫力もあるし治りが早いとのこと。逆に言えば、今回横倒れの歯だったら術後はかなり大変になるところなので、運が良かったとも。抜歯の後で血が10日程止まらなかったことがあったことや、止血しないまま自宅に戻るのは心配などの話はしていました。そのため、抜いた穴の状態からしてそれほどのことは無いでしょうと言いつつ、体質などもあるので断言はできませんが、と付け加えてくれました。
なんにしても、すんなり抜くことができたのは良かったとしましょう。
4本目は抜かずにすむよう願っているところである。
とは、上述の記事の結語です。最後の親不知は、抜かずにすむようにと真っ直ぐ生えてくれたようです。でも、見えない奥で酷い虫歯になっていたことにも気づかず、結局抜く羽目に遭わせてしまいました。そう思うと、なんだか申し訳なかったです。抜いた歯は今回も記念にもらって帰りました。
願い叶わず4本とも親不知を抜くことになりましたが、どれも思い出深い歯です。初めて抜いてから38年、そうして誰もいなくなりました。
何はともあれ、お疲れ様です。
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