穀象虫、現る
父方の実家ではお米を育てていて、自宅を含め契約している家庭分の米を倉庫に保存しています。新米を収穫する8月、まだ倉庫に去年の米が幾らか残っているとのこと。新米が出ると古米は値が下がります。しかし古米を残したままだと新米の保存場所にも困るし、廃棄するのももったいないので、もらって欲しいと話がありました。
父方の実家のお米は、古米と言えど玄米保存なので劣化しにくいです。それを精米すれば、一般に流通している白米に勝るとも劣らぬ美味しさというイメージです。喜んで1俵30kgを父と兄の家庭にそれぞれ貰うことにしました。

玄米(左)と白米(右)
家の近くにある精米機は、100円で10kgの精米が可能。玄米の方が米を劣化させにくいので、10kgずつ精米をしています。古米をもらってすぐ、10kgを精米。残り20kgは、紙の米袋に入れたまま家の中に置いていました。そして先日、新たに10kg分を精米しようと米袋を覗き込んだ時、父と一緒にびっくり。
<閲覧注意> 虫の詳細な話が苦手な方は、クリックせず先に進んでください。
<続んでも大丈夫だという方は、ここをクリック>
かつてなら、見かけることも珍しくなかった穀象虫(コクゾウムシ:他に「ゾウムシ」「米食い虫」等の呼称あり)が大量にいたのです。でも、ここまでの大量発生は見たことがありません。真っ黒で一回り小さい玄米がうようよ動いているようにも見え、虫唾が走りました。
※ イラストは、虫の数をかなり少なく、玄米や虫の色感も変えています。

玄米の上を這う穀象虫 イメージ
今の精米機は、性能が良くなっているので多少の虫や小石(砂粒)なら、取り除いてくれます。でも、これほどの虫を精米機に入れてしまうと、機械の周りに虫が住み着いてしまうんじゃないか、それはさすがに不味いだろうと対応策を練ることにしたのです。
ネットで検索して情報を得る
以下、主にネット検索で見つけたことです。
そのままゴミ廃棄した例
「米袋に虫が一匹いただけで、中の米を食べようとは思えない。」という人もいるようです。その米の量がどれくらいだったかは不明ですが、多くても数kg程度ではと思いました。
他にも、廃棄を勧めるサイトはありましたが、これまでの経験からも安易に捨てるのには抵抗がありました。
米を洗うときに注意して虫を除き食べた例
これは、私も経験があります。父も母も実家では米を作っていました。売りに出す米ならともかく、家で食べる米に虫が入っていても、洗うときに虫を除けていました。ただ、今回は大量に虫がいて、毎回除けるとなるとかなり大変ですし、洗うまでにかなり食べられてしまいそう。やはり精米する前に可能な限り取り除いた方が良いだろうとの結論になりました。
虫のわいたお米を食べても問題はない?
これも、私自身、経験していることで、特に問題はありません。ただし、アレルギーを起こす場合があるので注意が必要とのこと。詳しくは以下を参照してください。
www.maff.go.jp
誤って虫を食べても問題はない
さらに、他のサイトでは、アレルギーなどが無ければ、誤って穀象虫を食べてしまっても、特に問題はないとの事。ご飯を炊いたときのことを指していると思います。炊けば加熱消毒にもなるのでしょう。
これも私自身経験済み。とはいえ、あまりいい気はしないし、美味しかった記憶もないです。昆虫食が見直されている昨今ですが、穀象虫を食料にした例は聞いたことがありません。昆虫なので、たんぱく質など豊富かも知れませんが、好んで食べる気は起きません。
お米を捨てたくない
私の経験
まず、高校の頃までなら、小さな砂利を噛んでしまうこともそう珍しいことではなかった印象です。
米作りのそんな様子を知っていたからでしょう、祖父の作った米は格別美味しいのだ疑うことはなかったです。当時は今と違って精米の技術も低く、ごくたまにガリッと小石を噛むのには閉口しましたが、それでもキラキラ輝くご飯粒の魅力は忘れられないです。
わずかながらでも米作りを経験しているためか、私も父も、これくらいのことでお米を無下に捨てる気持ちにはなれませんでした。
虫の除去方法を調べる
幾つかのサイトを見ると、洗うときに浮いてくるので、それを取り除くという方法が多かったです。でも、玄米を濡らして保存するわけにもいかず、さらに調べました。駆除方法として見つかったのは4つ。
- 殺虫剤
- 水洗い
- 日光に当てる
- 冷蔵庫・冷凍庫で保存する
1は怖い上に詳しい知識がないのでパス。2は後の保存を考えると良策に思えません。3は玄米の天日干しは好ましいと思えず。4は虫が大量にわいたままで冷蔵庫や冷凍庫に保存する気にはなれませんでした。
う~む、どうしたものやら。
虫の特性から見直す
もう少し穀象虫自体にについても調べ、まとめました。
<生態>
発達した強固な後翅をもち、飛行能力も優れている。体も小さく、穀物の貯蔵庫などに容易に侵入する。
米びつに紛れ込んだ場合、成虫は黒色なので気がつきやすいが、幼虫は白色なので気づきにくい。万が一気づかずに炊いてしまったり、食べてしまっても害はない。
お米の害虫は15℃以下になると活動が鈍り、増殖することができない。
白米より玄米を好む。
<虫を取り除く方法>
屋外(直射日光が当たらない明るい場所)で、お米を新聞紙などの上に広げて陰干しをし、虫がいなくなった頃合いをみて、お米を収納する。(乾燥し劣化する恐れがあるため、長時間日光に当てない。)
お米につく虫の中には、非常に小さなものもいます。小さな虫だけならザルでふるいにかけて取り除くこともできる。
<虫の処理>
日光を嫌って這い出してきた虫は、日の当たらないところに隠れようとするので、つぶす、水に沈めるなど退治する
検討した結果、
1.テラス下なら直射日光にも当たらないので、ビニルシートを敷いて20kgの玄米を広げて置けば虫は逃げ出すだろう。その際に虫をすくって駆除。
2.虫がある程度逃げ出した後、玄米をふるいにかけ、さらに丁寧に選り分ける。
3.ふるいをかけ終わった玄米の半分(10kg)は精米する。残り10kgは、ビニル袋に入れて冷蔵庫に保管する。
と方針決定です。
虫駆除作戦開始
ビニルシートの上に玄米を広げる
テラス下にビニルシートを敷いて、20kgの玄米を広げます。
その様子を箇条書きにします。
(1)虫がいたのは主に玄米の表面で、その下にはほとんどいなかった。
(2)玄米を広げると、表面にいた虫が蜘蛛の子を散らすように大移動。
(3)虫の逃げる速度は予想をはるかに超え、紙ですくうことは無理と判明。
(4)見えない場所へ逃げるまでに捕まえた虫は10匹程度だけ。
このまま家に入られたら大変と、殺虫剤を取り出し、家の勝手口や窓枠に噴霧。もちろん、お米からは離れた場所です。しかし、既に多くの虫が家の中に入ったと思われました。どうしたものかと悩んだものの、先に玄米を選り分けることにしました。
玄米を少しずつふるいにかける
片手に握れるくらいの量ずつ玄米をとり、ふるいにかけます。
トントントンと手の平にふるいを当てると、幾らか虫が落ちていくのを確認できました。でも、一つかみで数匹いるかどうかです。逃げ隠れてしまった虫が圧倒的に多いので、今更、落ちた虫を捕まえる気にもならず、とにかく玄米をふるい続けました。精米用と、保存用を確保することのみに集中して作業を続けます。結果、1時間程で終わりました。
お米を10kgずつに分ける
次にそれを精米用と保存用の10kgずつに分けます。
精米用は、虫がいたのとは別の紙の米袋へ。
冷蔵庫に保存するお米は、ビニル袋に入れました。しかし持ち上げた時、
ざざざざざ~~~!
ビニル袋は破れてしまって、お米が滝状態に流れ出しました。幸い、ビニルシートの上だったので、2重にしたビニル袋に移すのはそれほど大変ではありません。これを底から持ち上げるようにして、冷蔵庫にいれます。
そして、精米用の米袋を車に乗せ、精米所へ向かいました。
消えた大量の虫はどこへ
精米を終えた白米はきれいでした。米びつに入れるとき、一斉に逃げた大量の虫の行く先が気になりました。もしかしたら、家の中に隠れた虫が米びつに入り込むのではないかーー。でも、今使っているに米びつの中で虫がわいたことはないし、白米なら玄米よりも虫がわきにくいらしいので、大丈夫であって欲しいと祈ることにしました。
鷹の爪を入れると、虫の発生を抑えられるとも知り、父に提案しましたが、唐辛子の辛みがつくのではとの疑念が拭えず却下。以前なら、数匹の虫を除いてご飯を炊くこともあったので、それほど気にしなくてもいいだろうとの結論に。もし、虫がたくさんいるようなら、鷹の爪も使おうとなりました。
その晩から、精米した古米でご飯を炊きます。米炊きの準備は父の役割。米を研ぐ際に虫が2匹ほどいたとのこと。精米機で取り除けなかったのか、さっそく米びつに入り込んだのかは不明。父は数匹なら除けるのは大したことは無いと言います。結局、その日の虫対策はここまでとなりました。
大量の虫の行き先
翌朝、驚いた父が「おい、虫が台所にいっぱいいたぞ。」と言ってきました。見ると、確かにたくさんの死骸の集団が幾つかあります。それぞれの集団の中心にあったのは、ゴキブリ駆除用のブラックキャップ(スキマ用)です。ゴキブリの苦手な父が念のためにと置いてあったもの。まさか、こんな形で活躍するとは思いませんでした。
数百~千匹はいたように思いますが、数えていません。集めるのも大変なので、掃除機で一気に吸い取りました。
その後、「〇〇で1匹見かけた」等の話はありましたが、大量に居るのところを見かけたことはありません。
検証結果
悪戦苦闘した結果をまとめます。
お米の味
ネットの情報では虫のわいたお米はかなり味が落ちるとの話も見かけましたが、今回食べてみて、それほどのことも無かったです。ちょっとパサパサしてる感じもしましたが、数回炊いた結果、水加減の影響の方が大きいと思われました。食い荒らされた米はスカスカになる、すぐ崩れる等の説明もありましたが、米粒の見た目も触った感じも、違いはよくわからなかったです。
大きく食い荒らされる前だったのか、私と父が余程鈍感なのか、その辺は不明です。
虫が大量発生した原因
父方の実家にも話をしましたが、今回の古米で他の家庭で虫がわいたという話はなかったとの事。そもそも、実家の倉庫は通気性や温度・湿度等に気を配って作られていて、米袋も、側面の壁に触れないように置く等、気をつけているそうです。
父も倉庫の方が保存状態が良いと知っていて、1俵のお米から精米10kgを取り出した後は、引き続きその倉庫に保管してもらっていたのです。むしろ、倉庫から出したことで虫の害が発生しやすくなったと思われます。
倉庫から出し紙袋を開け10kg分のお米を取り出した後、実家のに置いておいたのが拙かったのでしょう。袋口こそ閉じていたものの、隙間から虫が入った可能性は否定できません。夏場なら外に出かけた時、家の中は高温多湿で虫の活動も活発になったのでしょう。ちなみに、兄の家では虫は発生していないとのことです。
精米したお米その後
今のところ、問題なく炊けています。父は米を洗うときに気をつけていますが、虫を見かけなかったこともあるそうです。炊いたご飯の中に虫を見つけたこともありません。きっと、大丈夫であって欲しいと祈ったのが功を奏したのでしょう。
最後に、参考になったサイトを3つ紹介しておきます。
(廃棄を前提にしていないサイトです)
uchiyama-nosan.com
www.earth.jp
erecipe.woman.excite.co.jp
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