近況12.父のスマホの歩数計アプリ
80歳の父がガラケーからスマホに変えるかどうかを悩んでいた時、最後のダメ押しとなったのが「歩数計」でした。いろいろな説明を受けた後、歩数計がついていることを確かめてから、気持ちが大きくスマホに傾いた印象を受けたのです。
ガラケーの歩数計
数年前にガラケーに歩数計があると知ってから、毎日のように歩数や歩いた距離を確認していました。私との電話で、今日は何歩、何キロメートルだったと報告しすることも多かったです。
ただ、どうにも歩く距離が長くて私は半信半疑でいました。30分で3km弱を歩いた計算になるのですが、それだと時速5kmを超える速さです。歩くときに少しふらふらする、周りが揺れている感じがすると話す時でも時速5kmほど。およその計算で歩幅が70cmくらいになっているように思われ、さすがに今の父にはありえない話だと思っていました。
私に話すだけなら聞き流してもいいのですが、やや自慢気に他の人にも話すことがありました。もしかしたら、変な誤解を生むんじゃないか?という心配もしてましたが、歩く距離より毎日のように散歩していることの方が大事だと思い、あまり突き詰めずにいたのです。ただ歩幅の設定がおかしいんじゃないかとは話していました。
いつだったか、歩幅を測ってみたらと電話で提案したことがあります。でも、上手く測れない、面倒くさい等の理由を並べて、受け付けてくれません。それで、歩数はともかく歩いた距離は信用できないから、他の人に話すときは気をつけるようにと言ってありました。
スマホの歩数計
そんな父でしたから、歩数や歩いた距離は励みになっていたのでしょう。スマホになって、初めての通話とメールをした後、確認したのが歩数計のアプリでした。
ただ、歩数は簡単に表示できるのですが、歩いた距離はちょっとした操作が必要です。
毎日の歩数と一緒に棒グラフも表示されますが、それをタップしないと距離は見られません。当初はそれがなかなか覚えられず、何度も「あれ?どうやるんだった?」と聞いてきました。聞かれるたびに教えて「何度もやっている内に憶えられるよ。」とも言っていました。
それが数日経った頃、散歩の後に一人で距離数を表示できてずいぶん嬉しかったようです。「初めてスマホが面白いと思えた」というような話もしていました。ただ、そこに示された距離は相変わらずどうにも不自然な数値だったので、先日改めて
「せっかくだから、歩幅を測ってみる?」
と聞きました。私が帰省中の今なら、大体の歩幅を簡単に測れるとも言いました。
「どうやって?」
「廊下の長さを測って、それを何歩で歩けるかを数回試したら出せるよ。」
と言うと
「なるほど。」
との返事で、さっそく確かめることになりました。
目印の柱から柱までが約380cmです。私の歩幅だと5歩と少し。
父が歩いてみると9歩とあと少しでした。ずいぶん歩数が多いです。
「そんなに慎重に歩かなくていいから。」
と、もう一度歩いてもらいましたが、やはりほぼ9歩。8歩で歩いてみてとも言いましたが、8歩で歩くのは無理と言われました。9歩だと計算上、歩幅は42.2cmとなります。
その時になってようやく私の失敗に気づきました。父の歩幅を少なくとも50cmはあるだろうと思っていたのですが、それよりはるかに狭かったのです。スマホの歩数計は初期設定の歩幅が70cmほどでした。ガラケーも似た数値だったのでしょう。
でも、今更嘘もつけません。スマホには43cmと設定しました。言葉にはしませんでしたが、なんとも申し訳ない気持ちになりました。父は「こんなものだろう。」と笑った風に話していましたが、どことなく落胆しているようにも見えました。
これだと30分で3km弱を歩いたはずの距離が、2kmに届かない計算になります。時速4kmより遅いことにショックを受けたのは父より私の方でした。毎日のように散歩しているので、それなりに健脚のはずだと迂闊にも思い込んでいたのでした。
父、今日も散歩に行く
昨日は雨で行けませんでしたが、今日は散歩に出かけました。少し前なら散歩後に嬉しそうに歩数と距離を話してくれたのですが、今日は残念そうに話しているように見えました。無理もありません。以前の歩幅設定なら2.8km程の距離が、今日は1.6km程です。「いつもと同じ道を歩いたんだけどなあ。」の言葉が、胸に突き刺さります。もちろん、父に悪気はなかったと思います。
良かれと思ってした歩幅の計測が、出過ぎた真似になりました。
出過ぎた真似で失敗したことはこれまで幾度もあったのに…。
父は、私が帰省している間だからスマホにできたと言っていました。
そして、先日、スマホが面白く思えたとも言っていました。
父のスマホ新生活はまだまだこれから。
スマホに変えるんじゃなかったと思わせたくはありません。
心機一転、歩数計を見るのが少しでも楽しく思えるよう、明日は父と一緒に散歩しようと思っています。