※この記事は「遊び33.熱の悪魔と遊ぶ(1)おでん・缶コーヒー編」の続きです。
熱の正体を考える(きっと間違いもたくさん)
熱の正体は知りたいとは言え、一人で辿りつけるはずもありません。図書室や本屋でブルーバックスや岩波新書等を読みました。当時読んでいた『Utan』や『Newton』、『Quark』等の科学雑誌から得た知識もあると思います。
熱を持った「熱素」という物質があると考えられたこともあったそうです。どんなものも熱素を持っていて、多い方から少ない方に移動する等の性質を持つという説です。
でも、もし熱が物質なら、熱くなるほどに質量も増えることになります。一人前のレトルトカレーを温めると二人分に増えれば嬉しい気もしますが、そうはなりません。熱素が非常に軽いからでしょうか。でも、レトルトの袋を破ることも染み入ることもなく移動できるとなると熱素では上手く説明できません。
では、波動と粒子の両方の性質を持っているとされる光のようなものでしょうか。
そう言えば、白熱電球は、光だけでなく熱も発します。電気ストーブの反射板も、光も熱を反射します。共通性はありそうです。
でも、木の板に光は遮られますが、熱は板もその向こうの空気もゆっくり温めます。一方、光は一瞬でガラスコップ水の奥までを通りますが、熱は水に吸収されます。
熱と光を同一に考えるのには無理がありそうですが、波動に似た伝わり方をしてそうだと考えました。
ちなみに。音も波動ですが、これは空気は水、金属等何かを媒体にして伝わり、真空では伝わらないとされています。日光は熱も一緒に宇宙空間を進み、地球に到達しますが、太陽での爆発音(音があるのかは不明でも、衝撃波とかはありそう)は到達しません。
いろいろと読んでそんな知識の断片は得た気はしますが、詳しいことはよくわかってないです。私の中では「どうやら、熱は運動エネルギーっぽい」というイメージになりました。(多分、理解不足です。)
ただ、動きと熱という繋がりには、納得できる部分もありました。
針金で悪魔と遊ぶ
父から針金を素手で切ることができるという話を聞いて、遊んだことがあります。
始めはゆっくり曲げて山を作ります。そして、山がずれないように何度も何度も曲げ伸ばしを繰り返します。粘り強く続けている内にだんだんと固かった針金が軽い力でも曲がるようになり、やがて、ぷつんと切れます。針金の切り口を触ってみると「あつっ!」と思わず指を引っ込めました。予想以上の熱さでした。
ここにも見た目で熱さがわからない悪魔がいました。
いつだったか、この針金なら道具が無くても手で切れると友だちに話したことがあります。腕力の無さ気なやせっぽちの私にできるはずがないと相手にしてくれなかったので、素手で針金を切って見せることになりました。
他の友だちも寄ってきて、ちょっと大道芸でもしてる感じ。「針金が切れた時の切り口をよく見ると切れた訳がわかる」なんて話もして、曲げ伸ばしを繰り返します。
「こうやって、こうやって、こうやって…」
大袈裟な掛け声を出しながら、徐々にそのスピードを上げ、
「うぉお!」
と唸って見せていることろで、ぷつん!と切れました。
おぉ、と驚く輪の中で、友だちがその切り口を見ようと指でつまむと
「あちぃい!」
私と他の友だちも笑っていたような・・・
ちょっと太めの針金だったので、切り口はかなり熱かったと思います。火傷跡がしっかり残るほどでもないと思いますが、油断して触るとびっくりするはずです。
・・・でも、この記憶、夢や思い違いの気もしています。
動かすと熱が発生する?
手で火を起こすことは難しいですが、熱を作ることは誰もがやっています。手が冷えれば手を擦ります。摩擦熱は身近です。上述の針金も内部の分子間で摩擦が起きているのだとか。
消しゴムも摩擦熱で柔らかくなって粘着力が生まれ、鉛筆の粉を吸着するそうです。木炭画の場合、練り消しゴムをよく揉んでから使います。その際、体温で温められて柔らかくなると思っていたのですが、手の代わりに板に挟んでこねても柔らかくなるようです。ちなみにナイフで切るよりも、ひっぱって千切る方が柔らかくなります。感覚的に、練り消しが温かくなるような気がしました。
冷えて、でろでろねっとりとした濃い飴湯(片栗粉と砂糖をお湯で溶いたもの)をスプーンでぐるぐるかき混ぜる内、とろ~っとした液体になるように思います。それは、飴湯を鍋に入れ熱で温めたのと似ている気がします。
運動会定番の綱引きも、引っ張り合うことで綱の中で熱が発生している気がします。運動会で縄の準備と片づけをした際、けっこう温度が違っていると思いました。熱は、運動が加えられるほど大きくなり、運動が止まるとゆっくり放出されるのでしょう。
身体が冷えれば震えます。寒くて震えるのだと思いがちですが、体を温めようとして震えるのだと思うようになりました。実際、震えが来た時に無理やり身体全体を小刻みに震わせててみてください。ほっとするような温かさが身体を包んでくれます。(なお、病気等で震えている時は別です。意識が遠のきかけました。)人前でやる場合は変な目で見られるので要注意ですが、効果はてきめんです。え?私だけ?
「恐さで身体が震える」とも言いますが、恐さに立ち向かうための暖機運転だと考えれば、武者震いと強がることもできそうです。緊張しているとき、無理矢理、小刻みにジャンプするなどすると落ち着きます。え?これも私だけ?
間違っている部分もあると思いますが、動かすと熱が発生するのは不思議な当たり前だと思うようになったのでした。
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<余談 マクスウェルの悪魔>
熱の正体を知るために読んだ本に「マクスウェルの悪魔」なる言葉がありました。私が考えていたこっそり発熱する悪魔とは全然違って謎だらけ。ですから、以下の記述は、私の勝手なイメージです。
Wikipedia 「マクスウェルの悪魔」の説明を引用します。
マクスウェルが考えた仮想的な実験内容とは以下のようである(Theory of Heat、1872年)。
(※ 下線及び太字は私がつけています。「存在」が悪魔のこととされる)
- 均一な温度の気体で満たされた容器を用意する。 このとき温度は均一でも個々の分子の速度は決して均一ではないことに注意する。
- この容器を小さな穴の空いた仕切りで2つの部分 A, B に分離し、個々の分子を見ることのできる「存在」がいて、この穴を開け閉めできるとする。
- この存在は、素早い分子のみを A から B へ、遅い分子のみを B から A へ通り抜けさせるように、この穴を開閉するのだとする。
- この過程を繰り返すことにより、この存在は仕事をすることなしに、 A の温度を下げ、 B の温度を上げることができる。 これは熱力学第二法則と矛盾する。
これをイラストにしてみました。
(速い分子を赤、遅い分子を青で表示しています。)
1~3の仕事を立派にしているようなのに、4で仕事をしないという点が矛盾しているようで私にはちんぷんかんぷんなのですが、1の「温度は均一でも個々の分子の速度は決して均一ではない」という点は、なるほどなぁと思いました。
これと似た状態は、いろんな場所にあると思ったのです。当時は思い至りませんでしたが、例えば「働きアリの法則」にも通じていそうです。
総体としての機能を維持するためにも、温度の高い(よく働く)アリと、温度の低い(サボっている)アリがいるのは納得です。ただ、アリの場合、この二種類をきれいに選別しても、それぞれの集団内で働き方に差ができるのが通説とされています。
アリに限らず人間も似ている気がします。成績優秀な学生を集めたからと言って、皆が期待通りの活躍をする訳ではなさそうですし、成績が劣るとされた学生の中から大きな社会貢献をする人が現れることも珍しくありません。
そう考えると「温度は均一でも個々の分子の速度は決して均一ではない」という理論は「高温の状態でも分子の速度を均一にしておくことは困難」という結論になる気もします。
さて、仮にマクスウェルの悪魔が存在し分子を速さで選別できたとして、その集団の分子が速さを維持できるのか、その辺りは私にはわかりません。もちろん、エネルギー保存の法則(エネルギーの総量は変化しない)も承知の上ですが、地球上のエネルギーでさえ分散しやすいからこそ、人間はそれを集めることに懸命になっています。
悪魔なら宇宙全体のエネルギーの分散も食い止められるのでしょうか。
熱の正体すら理解できない私にその答えは出せませんが、それゆえに興味もあります。