手打ちうどんと言えば、麺の太さが一定しておらず、ところどころ押しつぶされているというイメージがあったのは、このお店の影響。いえ、それ以上に、私のうどん好きは、きっとこのお店のおかげです。
讃岐うどん系統。出汁は、いりこだしの薄めであっさり。食べ過ぎたかなと思うくらいお腹が膨らんでいても、ついつい、最後までお出汁を飲んでしまうほど、優しくて後も引かれる味です。
麺は柔らかいですが、コシもあって、ゆるくはありません。口の中で麺が馴染んでくれるのが楽しくて、つい、にこにこしてしまいます。
あげの味付けが絶妙なきつねうどんも魅力なのですが、高校生であれば量もしっかり食べたくて、お気に入りは「ジャンボうどん」でした。細く刻んだあげが、多めでお得感を増してくれます。ねぎも存在感があり、サービスの天かすを入れて、七味をふりかければ、香りも彩りもよくなって、食べる準備完了。ただし、あわてて一気にすすると口の中が火傷をしてしまうこともあるので要注意。
一緒に、おにぎり、いなりずし、ちらしずしなどを一皿付け加えることも多かったです。
40年近く前、何回通ったでしょうか。映画手帳にも、「今日はジャンボうどんを食べた」や「ジャンボうどんを食べ損ねた」等のメモが残っています。
実は、このうどん屋さんは、母が亡くなるまで入院していた病院の近くにありました。面会に行った際、昼食に父と一緒に立ち寄ることになりました。
トタン板を張り付けた店構えは、以前と同じ。一部が変色していて年月の経過を教えてくれます。のれんもかなり色褪せていましたが、さすがに何回か取り替えているでしょう。店内入り口付近のショーケースに、おにぎり、いなりずし、ちらしずしが並ぶのは当時のまま。いすや机も、同じ年月を経ている気がします。
正直に話せば、今の私は冷たく締めたしょうゆうどん派です。大学の友人に誘われて讃岐うどんを食べに行って以来、冷たいしょうゆうどんが一番のお気に入り。出汁に浸かったうどんは、食べてる間に伸びてしまうのと、熱くて一気に食べられないというイメージができてしまいました。
それで、久しぶりに訪れた時、まず、ざるうどんを試しました。しかし、麺が固く感じられ、以前のうどんとは別物の感じ。この店のうどんの魅力は、やはり出汁に浸かったうどんでないと味わえないと確信しました。
そこで、日を改めて訪れた時、ショーケースから、おにぎり(2個入り)の皿を一つ取り、ジャンボうどんを注文。高校時代の真似をしてみました。高校時代のジャンボうどんの値段は憶えていませんが、去年年末に行ったとき値段も500円以下でした。嬉しいコスパです。
食べ終えた時には、おなかがいっぱいになりました。この量を、間食として食べていたのですから、当時の食欲に少し驚きつつ、美味しい物をたくさん食べられた頃を羨ましくも思いました。
日を変えて、きつねうどんややまかけうどんも食べました。どれも納得の美味しさでしたが、ジャンボうどんの時の満足感にはかないません。結局、ジャンボうどんと、1皿のおにぎりを父と分けるのが定番の食べ方になりました。
母は去年年末に亡くなりました。でも、それ以降も、帰省した折、たまに父と昼食に出かけることがあります。長らく離れていた味ですが、母のおかげで再び身近な味となりました。
今週のお題「好きなお店」