tn198403s 高校時代blog

「人生に無意味な時間は無い。ただ、その時間の意味を感じることなく生きているだけである。」この言葉を確かめてみようと、徒然なるまま、私の高校時代(1984.03卒業)の意味を振り返り綴るブログです。

高校時代のロッキード判決の記憶

この間の政変を見聞きしながら、ブログに政治ネタを書くかどうか悩んでいました。政治について高校時代の私が感じたことなんて、大した話ではありません。ただ、センシティブな内容ではあるので、このブログの今後に影響するかもという不安がつきまとい記事に踏み出せずにいました。

 

でも、書いておくことに決めました。

私の中でも決して小さくない出来事でしたから。

田中角栄元首相のロッキード事件に関して懲役4年、追徴金5億円の有罪判決が出ました。1983年10月12日のことです。

 

 判決前のこと

田中角栄が書いた『自伝 わたくしの少年時代』という本を、父から渡されたのが小学2年か3年の時でした。「この本を読んだら偉くなれる」みたいなことを言われました。全部読んだ自信はないですが、その中で角栄が幼かった頃、母を困らせた話を漠然と憶えています。お金を盗んで嘘をついた訳ではないが、お金を勝手に使ったことを素直に話す場面。要するに事の重大さがわからず、お金を使ってしまった話だったと思います。

この本は恐らく、父が選挙講演会等に参加してもらってきた本だったのでしょう。本の発行年をネットで調べると1973年でした。田中内閣は1972年10月に発足しています。1974年12月9日に田中内閣は総辞職し、三木内閣誕生となります。田中首相在職通算日数は886日。「三角大福」なる言葉が使われ、政権の奪い合いが激しかった頃でした。

本の影響もあり、田中角栄の動向はその後も気になり続けていました。ただ、父が期待したような偉い人にはなれなかったです。

 

総辞職の前辺りから、金と政治の話が世を席巻していたように思います。でも、小学生に100万円もするピーナッツのことなどちんぷんかんぷん。やがて、田中角栄が逮捕されます。1976年7月27日でした。日本で一番偉いと言われた人が逮捕されたことで複雑な気持ちになりました。金と政治の話が、本の内容とつながったのは、偶然ではないようにも思えました。それ故に、本の記憶が残り続けたのだろうとも思います。

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ロッキード事件でピーナッツが話題に

 判決以降のこと

そんな経緯もあったので、懲役4年、追徴金5億円の有罪判決も仕方ないという思いと、金権に物言わせるやり方は不味かったが、やろうとしたこと、目指したことはそんなに間違ってはいないという思いとがありました。日中国交正常化だけでなく、オイルショック時に中東との外交を維持しエネルギーの直接確保したこと等、歴代首相の中でもアメリカに物言えた人だと思います。(この辺の知識は高校の先生から)

逮捕されて以降、自民党を離れて無所属としての立候補でしたが、地元新潟の選挙区では判決後も常にトップ当選でした。しかも実際の内閣への影響力は絶大で、「角影内閣」、「田中曽根内閣」、なんて呼称も使われていました。その人気ぶり、影響力の大きさはどこにあったのでしょう。

世評では、権力を手にして地元にお金を流したからという論調が強かったですが、今思えば、それだけではない気もします。

 

判決に合わせて、国会にも動きがありました。

一つは、田中判決解散とも言われる解散総選挙です。元首相とは言え、逮捕後は自民党を離れ無所属だったのですが、田中角栄衆議院議員辞職を拒否。国会は空転、そこで与野党合意の上、重要法案成立後に中曽根内閣が衆議院解散させました。選挙では、角栄は選挙区のトップ当選しますが、自民党過半数割れで敗北し、新自由クラブと連立政権を立てるに至ります。

もう一つは、政治倫理審査会の設置です。金権政治を再発させないために政治倫理の確立が長く議論されました。会の設置は1985年でしたが、国会で話題になった「倫理」なる言葉は、高校時代も話題になりました。先生の言動に納得がいかないと「教員として倫理的におかしい」なんて言ってました。「国会で りんりりんりと 虫(無視)が鳴く」なんて川柳があったように思いますが、卒業後のことかも知れません。

ちなみに、政治倫理審査会が、河井議員夫婦の件で10数年ぶり開かれる可能性もあるかも、という気はしています。

 

現在の政権と比較して

田中角栄時代の政権と現在の政権との大きな違いは、力を注ぐところが、公約・政策の実現にあるか、政権与党で居続けることにあるかではないでしょうか。

何だかんだ言っても、田中角栄は『日本列島改造論』を掲げ、有言実行していたというイメージが残っています。「コンピュータ付きブルドーザー」なる異名もありました。批判にも正面から立ち向かっていた感があります。

現政権には、選挙中にはこそっとしか言わなかったことを、選挙に勝てば国民の信を得たとばかりに、それも水面下で強行するサブマリン(潜水艦)のイメージです。批判を回避する術に長け、水面の上に出ない=表立った議論をしない感があります。

 

民主党政権の時代、野に下った自民党は、公約の実現より政権維持にこそ旨味があると学んだかのようです。公約はお飾り、とりあえず政権を維持しておけば、理由は後付けでも、無理を押し通してでも、何とでもなると判断した気がします。党を挙げて、正しさより利権の旨味、国民の暮らしより政権維持に動いてるように思えます。

 

黒川検事長の定年延長が閣議決定された時、「やりすぎ」「おかしい」と言う声が自民党内にもあったようですが、議論にもならず、呟きに終わった感があります。国家公務員法等改正案を審議する内閣委員会にいた自民党の泉田議員は、「審議を尽くすことが重要であり強行採決は自殺行為です。」とのツイートをしますが、すぐ委員会から外されました。

党内で対立が起これば野党に突かれて政権を失いかねないという恐怖感が広くはびこっているのではないでしょうか。正しいかどうかより、政権維持が優先されているのではないでしょうか。

 

かつてなら自民党内でも異論、反論が巻き起こり、自制がかけられていたと思います。「三角大福」も「自民党をぶっ壊す」も、党内論戦が華やかでした。そして、良くも悪くも理論武装した上で、国会内で野党と議論できていたように思います。今や、国会ではほとんど議論になっていません。質問の内容に触れず、自分の主張をするだけの答弁のなんと多いことか。与党内でもまともな議論をせず、突如閣議決定し、そのまま発表するなどしているのですから、質問にきちんと答えられないのは当然に思えます。

 

今、河井議員夫婦が公選法違反で、「桜を見る会」前夜祭の件で弁護士や法学者ら662人が安倍首相を刑事告発に踏み切る等、国会も揺れています。どう決着するのかまだ判然とはしませんが、国民の国会不信が少しでも解消されることに期待したいです。