tn198403s 高校時代blog

「人生に無意味な時間は無い。ただ、その時間の意味を感じることなく生きているだけである。」この言葉を確かめてみようと、徒然なるまま、私の高校時代(1984.03卒業)の意味を振り返り綴るブログです。

音楽14.『恋人がサンタクロース』(松任谷由美)がクリスマスを変えた

かつてクリスマスは家族のイベントでしたが、『恋人がサンタクロース』(松任谷由美)の歌が流行り出した頃から恋人同士のイベントになった気がします。これまでのクリスマスのイメージを劇的に変えた歌を今更ながら味わい直してみました。

とにかく、歌詞がよく練られていると思うのです。

 

もくじ

 

クリスマスの伝説 

「昔 となりのおしゃれなおねえさんは」

歌の冒頭が「昔」。それだけでこの歌がずっと続いている伝説であるように思わせます。日本文化的にも「昔からそうだった」という話はスルッと入りやすいです。

そして「となりの」。伝説は身近な場所にあったとして、ぐっと親近感まで高めます。

さらに「おしゃれなおねえさん」。もう少女ではなくなっていて、それも憧れの「おしゃれ」を身につけて自立した女性を思わせます。

 歌い出しの1行で、この歌が、昔から親しみと憧れのある伝説にしてしまったのです。

 

謎めくお話

「クリスマスの日 私に云った」

伝説であることを示したすぐ、それがクリスマスのことだと示唆しますが、続けざまに謎を投げかけます。

「今夜 8時になれば サンタが家にやって来る」 

謎1.「今夜 8時」

それまで通常、サンタは寝ている間に来るものでした。お姉さんなら当然起きているし、時間の明示までしてるのが謎。

謎2.「サンタが家にやって来る」

通常ならサンタの顔は見られません。また「家に来る」とした効果も大きいと思います。お姉さんが会いに行くのでないこと、家族と顔を合わせることも予想できる謎。

イメージ的には、夜の8時までは家族とのクリスマス、それ以降は彼と二人のクリスマスという感じでしょうか。家族との時間も大切にしている彼(サンタ)の配慮が見え、素敵な存在を際立たせてるように思うのです。 

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恋人がサンタクロース

これまでの常識と解き放たれる伝説

「ちがうよ それは絵本だけのおはなし」

謎に対して少女は、子どもとしての常識で反論しますが、その根拠を絵本にしているのが、上手いです。人から教えてもらった常識であって、自分で確かめたわけではないという仕掛けが、本当のことを自分で確かめたい気持ちに繋げるのでしょう。

「そういう私に ウィンクして」

答えを明確にしないことで、これまでの常識も一つの答えであること、でも別の答えもあることを含ませている感じです。

「でもね 大人になれば あなたもわかる そのうちに」

ここでの大人とは、成人の意味と少し違って、「おしゃれなおねえさん」の意味。少女にとって憧れの存在になれたなら、本当のことがわかるということでしょう。

これまでの常識を認めつつ、伝説を解き放ち新しい世界へ誘うのです。

 

伝説の世界を夢みる少女

恋人がサンタクロース
本当はサンタクロース つむじ風追い越して
恋人がサンタクロース
背の高いサンタクロース 雪の街から来た」

ここで、ユーミンの魔法も全開です。おしゃれなおねえさんにとって、サンタクロースは恋人であること、雪の中で颯爽と現れること、背が高いこと、一気に暗示にかけて歌い上げてしまいます。疑問を持つ余地はありません。

 

そして明日を楽しみに待つ

「あれから いくつ冬がめぐり来たでしょう
今も彼女を 思い出すけど
ある日遠い街へとサンタがつれて行ったきり

そうよ 明日になれば 私も きっとわかるはず

恋人がサンタクロース
本当はサンタクロース プレゼントをかかえて ・・・」

 

2番の歌詞では、時が経ち、少女がすっかり「おしゃれなおねえさん」になり(なったつもりで)、明日来るであろうサンタクロースの恋人を待っています。かつての隣のおねえさんを追いかけるように、一緒に家から連れ出して欲しいと願っています。

恋人であること、雪の中で颯爽と現れること、背が高いことに加えて、プレゼントまで所望して。ちゃっかりしてます。

 

時代の移り変わりと歌の力

この歌がリリースされたのは高校入学前の1980年12月1日。1980年のクリスマスソングになるのですが、当時の世の中は、クリスマス=家族のイベント、年越と元旦=家族のイベント、お正月三が日=親族を含めたイベントという感じだったと思います。

クリスマスソングという枠ができ始めたのもこの歌からというイメージです。

 

以前、『ルビーの指環』(寺尾 聰)のリリースが、高校入学前の1981.02.05で、じわじわと聞く機会が増えて大ヒットとなったことを記事にしました。

tn198403s.hatenablog.jp

 『恋人がサンタクロース』も、リリースされた時期と、印象に残っている時期がずれています。いろいろ見てみると、松田聖子が1982年にカバーして歌っていて、その影響も大きいと思います。当時の女子高生世代のハートをがっちりつかんだとも言われているようです。

 

そんなこともあって、リリース後、女子高生の憧れの歌になるまでにタイムラグがあったのでしょう。やがて80年代後半、私の大学時代には、クリスマスが恋人のイベントとして定着していった感じがします。単に自分の境遇と歌とがマッチしたタイミングだっただけかも知れないです。とはいえ、この歌はその後も度々カバーされたり、CMに起用された印象があります。映画『私をスキーに連れてって』(1987年)の挿入歌にもなりました。今年もソフトバンクのCMに起用され話題になっているようです。本当にクリスマスの伝説の歌になったんだなぁという感じです。

 

映画『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)では、昭和30年代にはクリスマスが家族に軸を置いたイベントであったことを教えてくれます。家族のイベントから、恋人のイベントに軸を変えたことには、いろいろ意見はあるでしょうが、この歌のクリスマスを変えた力は疑いようもないと思うのです。

 

 

今週のお題「クリスマス」