tn198403s 高校時代blog

「人生に無意味な時間は無い。ただ、その時間の意味を感じることなく生きているだけである。」この言葉を確かめてみようと、徒然なるまま、私の高校時代(1984.03卒業)の意味を振り返り綴るブログです。

音楽12.『ウエディング・ベル』(Sugar)の本心は?

「くたばっちまえ!アーメン」が受けて大ヒットしたシュガー(sugar)の『ウエディング・ベル』(1981年)。ただ、その箇所だけがやたらと注目されてしまった感がするのは残念です。

「クイズ・ダービー」という番組でも歌詞がクイズとして取り上げられました。「一言言ってもいいかな (  ) アーメン」の(  )の部分を問う問題に、故篠沢教授が「くたばれ」と回答したところ、正解として扱われたこともあります。

そんなことも注目度アップ、ヒットに影響したのかもしれませんが、歌詞全体をみれば、果たしてそれほど嫉妬に燃えた本心だったのか?という疑問が私にはあります。

 

そもそも、新郎から元彼女に結婚式の招待状が送られているという点だけで、ありがちな愛憎劇とは違っています。何故、元彼女に招待状を送ったのかについて、歌詞では触れられていませんが、いろいろあるにせよ、祝福してくれる、祝福して欲しいという気持ちが、新郎にあったのでしょう。

 

元彼女も、歌詞の中に祝福したい気持ちが見え隠れして揺れています。一方で、自分ではなく新婦を選んだことへのやっかみもあります。その辺の揺れ具合の見える歌詞がとても絶妙で、憎めない元彼女という印象です。

 

ここで「くたばっちまえ! アーメン」が、どこに掛かっているのか個別に見てみます。

<一番の歌詞>

なぜなの教会のいちばん後ろの席に ひとりぼっちで座らせておいて

二人の幸せ見せるなんて ひと言 いってもいいかな

くたばっちまえ アーメン

ここでは、いちばん後ろや、ひとりぼっちに掛かっている気もします。つまり、元彼女が、いちばん後ろの席でも、ひとりぼっちでもなかったなら、許せていたと受け止めることは可能だと思うのです。

 

<二番の歌詞>

お化粧する娘はきらいだなんて あのやさしい瞳はなんだったの

もいちど言ってもいいかな くたばっちまえ アーメン

ここでは、お化粧する娘はきらいという台詞、または、あのやさしい瞳に対して言ってる気もします。つまり、今、目の前にいる新郎ではなく、過去の元彼への悪態ともとれます。

 

<三番の歌詞>

そうよもうすぐあなたは私を見つけ

無邪気にほほえんでみせるでしょう

そしたらこんなふうに言うのよ お久しぶりね

おめでとう とても素敵な人ね

どうもありがとう招待状を

私のお祝いの言葉よ くたばっちまえ アーメン

果たして、新郎は無邪気にほほえんで見せたのでしょうか?ここが一番の疑問です。無邪気にほほえまなかったなら、悪態はつかないであげるわ、とも受け取れるのです。

また、新郎は、元彼女へ無邪気に招待状を送ったのでしょうか。どうにも引っかかります。

 

一番、二番の歌詞は、おそらく元彼女の心の中での悪態でしょう。離れた場所にいる新郎に向かっての悪態だとしても、口には出していないはず。

三番の歌詞は、新郎が無邪気にほほえんだら言うぞ、という決心とも受け取れますが、少なくともまだ口に出していません。これこそが、とても絶妙だと思う理由です。

 

そして恐らく、新郎は無邪気には、微笑まないだろうと思うのです。申し訳なかったとか、ごめんねとかの表情でもないと思います。綺麗ごとのように思われるかもしれませんが、新郎はきっと感謝の表情をするんじゃないかなと思います。

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歌詞には、元彼女の心情が( )部分で示されています。

<三番>

祝福の拍手の輪につつまれて(私はしないの

どんどんあなたが近づいてくるわ(私はここよ

お嫁さんの瞳に喜びの涙(きれいな涙

悲しい涙にならなきゃいいけど(そうねならなきゃいいけど

やっかみはあるものの、新郎への好意もあるし、新婦への感動も伝わってきます。(そうねならなきゃいいけど)の部分は、見解が分かれるかもしれませんが、少なくとも(そうなってしまえばいいのに)ではありません。

 

『ウエディング・ベル』のヒットを受け、女の本心は怖いなんていう意見もあったように記憶していますが、口に出したかどうかも不明な「くたばっちまえ!アーメン」についての表層的な感想より、「くたばっちまえ!アーメン」を心の中でぐっとこらえていたともとれる深層の部分の方がずっと気になっていました。

 

そう思ったのには、伏線があります。元恋人同士が再会する歌『吸殻のある風景』(さだまさし)です。この歌もFM放送で、さだまさし特集があった際に録音して何度も聞いていたように思います。歌の内容は、元彼女からの結婚報告を受け、仕方なかったことなの、落ち込まずに貴方は貴方の人生を生きてね、という応援歌風。お決まりの愛憎劇とは違う形を教えてくれたように思います。

 

なんにせよ、『ウエディング・ベル』が元恋人への嫉妬の歌ではないという確信めいた感じが私にはずっとありました。ドロドロした愛憎劇を期待したがる人がいるのは承知していますが、恋愛の形は恋人の組み合わせの数だけあると思うのです。元恋人から結婚披露宴の招待状をもらった人は、少数派でしょうが、一定数いるのではないでしょうか。

 

 

ところで、私にはコーラスについて語れる知識がないのですが、シュガーのコーラスは、素直に美しく感じられ、また建前と本心の区別や重なりも効果的だったと思います。逆に言えばその効果が大きかったからこそ「くたばっちまえ アーメン」が注目を浴び過ぎたのでしょう。その辺り少し『転校生』の小林聡美と共通点を感じました。

 

 

結果的に、『ウエディング・ベル』のレコードは約70万枚売れたそうです。なんだ、ミリオンヒットじゃないんだと思う方もいるかもしれませんが、参考までに松田聖子の『赤いスイトピー』の売り上げが約50万枚とのこと。

セーラー服と機関銃』が86.5万枚。

それを踏まえても、十分に当時のヒット曲として言っていいと思いますし、「くたばっちまえ!アーメン」部分以外の秀逸な歌詞も、もっと評価されていいと思うのです。