tn198403s 高校時代blog

「人生に無意味な時間は無い。ただ、その時間の意味を感じることなく生きているだけである。」この言葉を確かめてみようと、徒然なるまま、私の高校時代(1984.03卒業)の意味を振り返り綴るブログです。

映画9.『U・ボート』(2)海の原風景と気まずさ

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 ※「映画8.『U・ボート』(1)潜水艦での戦闘の原風景」の続きです。

 

『U・ボート』では、海の様子も強烈な印象が残りました。他の映画でも海を写した印象的なシーンな数多くあります。『太陽がいっぱい』では、大海原で小舟に取り残されじりじりと日に焼けるシーン、『ジョーズ』で見た間近の水面や水しぶき、真夜中の海中水泳の恐さ、『タイタニック』での美しい夕焼けや、船を飲み込む海、等々。

 

でも、『U・ボート』の海は別格でした。荒れた海の波の高さや角度、跳ねるのではなく襲ってくる水しぶき、海面の色、等々。視点の低さも初めて観る感覚。また、海中に沈んだ潜水艦の内部で高い水圧が感じられる演出等々。

 

大げさな表現を許してもらうならば、他の映画は、どこかそのシーンのために作られた海の映像という感じがあるのですが、『U・ボート』は、実際の海の中で撮られたシーンという感じと言えるでしょうか。

例えば、実際の船で漁の様子を撮ったドキュメンタリー映像より、海が伝わった感があります。ドキュメンタリー映像は漁を撮影した映像に海が写り込んでいいるのに比べ、『U・ボート』は、海を撮影していたところに出演者や大小の道具が写り込んだ感じと言えるかも知れません。

また、『U・ボート』を観る前と観た後で、天気予報で波の高さ5mと聞いたときのイメージも違った気がします。観る前は2階建て程の波の絵だったのに対して、観た後では波の谷からきつい坂を見上げた高さ5mの峰という映像になりました。さらに、波の谷から持ち上げられて、今度は峰から5m下を見下ろす映像に変わります。体が大きく5m上下するのがイメージできる感じです。

 

荒れた海を知ることで、穏やかな海の安堵感というか、幸運感というか、それも増した気がします。「生きていて良かった」という感覚は、死に直面した人ほど実感がこもるらしいですが、それに似ているのかも知れません。『U・ボート』では死と隣り合わせになるシーンも多いので、そういう発想になりやすいかも。

 

ん~、ちょっとたとえが飛躍し過ぎたかな。

でも、後に同じウォルフガング・ペーターゼン監督の『パーフェクト ストーム』(ただし、海の映像はともかく作品としては今ひとつの感あり)に上書きされるまで長らく、海の原風景でした。否、上書きされたというより、補完されたという感じかな。  『U・ボート』の海も今なお健在というか、『パーフェクト ストーム』と記憶がごちゃごちゃになってる部分があるというか…。

 

 さて、潜水艦の戦闘や、海の風景で圧倒されるこの映画のラストも強烈です。期待を裏切られた、或いは、現実を見せつけられた感じもあって、その辺のとらえ方は、観る人の判断でしょう。しかし、きっちりと大戦の中でドイツ軍のUボートが置かれた位置を冷静に映し出していることで、私のこの映画への評価は上がっています。今でも私の映画ベスト10からは外せません。

 

 

ところで、実はこの作品は、友人と一緒に行く約束をしていながら、うっかり約束を忘れてしまったという逸話があります。結局、日を改めて一緒に観に行きましたが、友人には何と思われたでしょうね。

 

当時、戦争に憧れていた訳ではなかったと思いたいですが、強さには憧れがありました。反戦映画と好戦映画の区別もないまま戦争映画はよく見ていました。戦艦・空母や戦闘機、軍の階級等の情報には興味が強かったです。どんな作戦や戦闘があったかなど幾つかの戦記物も読んでいました。きっと、友人にUボートがどんな潜水艦なのか、知っている限りの話もしたはず。私の映画への期待も散々語ったような気もします。

 

その時、おそらく「カッコイイ」という形容を深く考えることなく何度も使っていたと思います。戦記物に「戦争はカッコイイものなのか?」という問いかけを見かけた時、内心で「戦争はカッコイイとは思わないけど、強いのはカッコイイ。」と答えていたのも憶えています。

 

映画を観終えた後、友人とどんな話をしたのかよく覚えていません。「カッコイイ」と思った場面は確かにあったものの、作品を通じて単純に「カッコイイ」映画だと片づけるには無理があります。この映画は、むしろ「強い=カッコイイ」ではないことや、「強さ」にはいろんな見方があるのだと知る分岐点の一つになっていきます。

 

友人との約束を忘れてしまった気まずさは、ほとんど何も知らずU・ボートの強さに憧れていた気まずさを更に重くして心の奥底に沈ませ、浮上したのは自分の浅はかさだったのでした。

 

 

 

 ※「映画8.『U・ボート』(1)潜水艦での戦闘の原風景」も読む。

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