モンキー・パンチさんの訃報を聞きました。お悔やみ申し上げます。代表作「ルパン三世」の原作漫画は、「読者の虚をつく」或いは「常識破り」、またブラックジョーク等、独特の魅力がありました。青年雑誌で連載されていましたが、アニメ化・映画化と続く中で、原作とはかなり違うキャラクターになっていきました。それについては、いろんな意見もあるようですが、原作の連載開始から50年以上経っても、アニメ化される等、衰えない人気には驚くばかりです。
私の中では、モンキーパンチと言えば『ルパン三世』、ルパン三世と言えば『カリオストロの城』。高校時代にハマった作品の一つです。劇場公開が1979年12月15日で、テレビの初放送は1980年12月17日。高校入試を控えながら、夢中になってテレビで見てのを覚えています。
高校時代にハマったというのは、実はラジオ放送があったからです。夜遅くの放送で、時折、アニメ映画の音声の放送がありました。『カリオストロの城』の他に、『宇宙戦艦ヤマト』や『あしたのジョー』もあったように思います。これらをカセットテープに録音し、勉強の傍らBGM代わりに何度も何度も聞いていたのです。そして、一番たくさん聞いたのが『カリオストロの城』でした。
一時は、全ての台詞や効果音、音楽まで覚えていました。台詞や効果音もできるだけ上手く言いたくて、テープを巻き戻して聴いたり、時にリズムをとってみたりしたものです。間合いや、音の高低など、いろいろ考えて聞いたので、いろんなところで役に立った気がします。さすがに今はかなり忘れてしまいましたが、お気に入りのシーンは意外と覚えています。
一番のお気に入りは、塔に閉じ込められたクラリスとルパンの再会シーン。
「どなた?」「ドロボーです。」「ドロボーさん?」「こんばんは、花嫁さん。」(中略)
から始まり、塔から助け出すというルパンに、このまま帰ってと答えるクラリス。その返答に嘆きながらも、
う。う。う。・・・・む・・・ ポン!(と、思いがけない手品を披露)
「今はこれが精いっぱい。」と、クラリスを笑わせます。
そして、後に「待ってるんだよ。」と言うルパンに、クラリスは、しっかり「はい。」と返事をするのです。
クラリスの答えを否定も肯定もせず、説明や説得すらもせず、全く関係の無いことで安心させ、信頼を得ていくこのシーンは、たくさんのことを教えてくれた気がします。簡単にあきらめたり、強引な行動に出たりするのではなく、別の何か良い方法があるかもと考えてみるのもありですよね。もっとも、私にはこんな風に信頼を得られる魅力も技もないのですが、少しは心がけたいものですね。
今思えば、ルパンの優しさや明るい笑いに繋げる行動は、原作と大きく違いますが、「虚を突く」ことや「ジョーク」を活かす点で、上手く原作のルパンらしさを引き継いでいるように思います。この辺り、モンキー・パンチさんの原作を尊重した上で、宮崎駿監督のオリジナリティが出ていたのではないでしょうか。『カリオストロの城』が、ルパン作品群のターニングポイントとして、不朽の名作となりえたのは、そうした原作へのリスペクトにも理由がありそうに思うのです。
モンキー・パンチさん、素敵な原作をありがとうございました。
どうぞ、安らかに。